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Vol.7 (2001/08/18) viva!

 
SOCCER LOVERSのみなさんこんにちは。
2001年8月4日Jリーグオールスターサッカー。
とっておきのサッカー空間にしびれてきました。
真夏の夜のサッカードリーム。
最高の劇場と演出家が紡ぎ出した極上のノンフィクションをお届けします。

【劇場豊田スタジアム】
刻一刻とその時が近づいている。
猛烈に沸き起こる高揚を抑えようも無いまま、そこへ向かっていました。
「物凄いスタジアムができるらしい。」
噂に噂の蓄積で、猛烈に焦がれていた「豊田スタジアム」。
やっと会える。

エントランスからピッチサイドへ。
90°あごを持ち上げたまま360°ぐるりとターン。
仁王立ちで立ちつくすばかり。
驚きと幸福と、やっとの邂逅へのよろこびと。
感激がこみ上げて気持ちが一杯に。眼の奥がぎゅっと熱くなるのを感じました。
メインスタンド側からピッチサイドヘ足を踏み入れたが最後。
ピッチと客席が近いことは言うまでもなく。
2,3歩足を進めて立ちつくす。
メイン側からバックスタンドを眺めるのに90°顔を持ち上げてしまうということが
一体どういうことなのか。
急勾配。
そびえ立つ壁のよう。空に向かってせり上がっているのです。
ピッチに迫りくるさまの凄味といったら。
畏敬の念、本当に畏れさえ抱いてしまうほど。
日本に限らずいろいろなサッカー専用スタジアムに足を運んできたつもりですが、
どんな経験値も既成概念も吹っ飛んでしまうような目の前に広がるこの光景!
震撼。
間違いなく、欧州も南米も、サッカーの国のサッカーラヴァーズ達さえもびっくり。
間違いなく、日本が世界に誇れるサッカースタジアム。

客席が埋め尽くされ、試合が始まったなら。
武者震いの向こうに見えるもの。
直射日光が肌を突き刺す痛いほど暑い時間帯。こけら落としまで後6時間。
その時を静かに待つ豊田スタジアムの中にいられることも幸せだな。
ただならぬ高揚。
しばらくあごを持ち上げたまま仁王立ちしていることにしよう。

最高の劇場が整うということは、
やはり最高の空気が生まれ創られるということなのですね。
極上に包まれたここだけの世界。
空間が創りだす空気力を見てしまった気がします。
劇場の力。
豊田スタジアム。

【名演出】
最高の劇場。最高潮のボルテージ。空間を共有できる喜び。
まさにサッカードリーム!
最高空間の陰に名演出あり。
実のところ、ドラマを華麗に操った最高の演出家の存在がいかに尊かったかは言うまでもありません。
巧みな笛吹き。オランダ人のディック・ヨル主審であります。
GRASS WORLD前号。(もしも覚えている希少な方がいらしたら御礼申し上げます。)
オランダリーグの「むやみに吹かない主義」。
ひいてはJリーグに活躍の場を移したその時からの、
名付けて「郷に入ってはモードチェンジ」で名審判ぶりを見せてくれた、
そのプロフェッショナル度について特筆させていただいた通りです(お読みでない方はバックナンバー前号参照してくださると嬉しいです)。
日本人の私達にとっては記憶に新しい‘98W杯アルゼンチン戦はもちろんのこと、
チャンピオンズリーグ決勝という、ここぞという大舞台を経てこそのゲームメイク経験値。
さすがの威厳と余裕を醸し出しているのであります。
4対3。

計7ゴールの内訳は、
明神選手に始まりカズ、それでもって柳沢選手はハットトリック、
アレックスにゴンゴールまで。
真夏のサッカードリームに、4万2千人が一体となって揺れに揺れに揺れたあの熱気。
オールスターだもん。特別な夜だもの。
やっぱりこうでなきゃ。
恐るべしディック・ヨルさんマジック。
7得点中PK3ゴール!
シチュエイション、大袈裟でなく、オールスターゲームのアイデンティティーを
理解していてこその気の利いた素敵ジャッジに、
大きな意味でのサッカーへの愛を感じずにはいられませんでした。
先輩の前でもひるまずPK立候補したアレックス、
次のPKでは思わずアレックスが中山選手に譲ってしまう微笑ましさ、
ファンにはたまらないシーンも垣間見ることができました。
もちろんPKシーン以外でも、夢の劇場と化したただならぬ雰囲気の中、
カズフェイント、俊輔美アシスト、柳沢ドンピシャリバウンドボレーゴール!
などなど、嬉しいプレイの詰まった玉手箱。
選手がピッチを去る横顔や後姿に向かって、
たくさんの子供達、女性も男性も、
色々なクラブのサポーター達が猛烈エールを送り続けている姿。
スタンドもまさにオールスター。
サッカー愛にあふれた夜でした。


 
 
萩野志保子のGrassWorld
  サッカー中継、「速報!スポーツCUBE」のサッカーコーナー担当。サッカーを愛してやまない萩野志保子が、Jリーグ・日本代表取材記はもちろん海外サッカーなど、萩野ならではという視点で綴っていきます。  
 
    
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