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Vol.8 (2010/02/05) 
[ピッチ上のタンゴ]  アルゼンチンリーグ「ボカ‐チャカリタ」
 
アルゼンチンリーグ。

高原直泰選手のボカジュニアーズ移籍をきっかけにテレビ観戦を始めた一人です。
これまでは、アルゼンチンのクラブチームの試合といったら、
トヨタカップのレアル対ボカジュニアーズを国立で観戦したのみ。
代表にしたってトヨタカップのボカにしたって、対戦相手は違う国の代表、ないしは違う国のチーム。要は、アルゼンチンのクラブチーム同士の試合を見たのはつい最近、初めてのことだったんです。

ボカジュニアーズ対チャカリタ。
衝撃的だったのは、激しいプレッシャーとそのスピード。中盤は高い位置からガンガンあたりにいく。「よせ」というより「あたりにいく」という表現がぴったり。
容赦ないタックル。ボールになんて全然行ってない、まさに体そのものにあたりにいく。猛スピードで走りながら、体めがけてジャンピングタックル!猪突猛進突っ込んで行ったあとも、何事も無かったように次の動きへ。タックルされた方も少々のことでは倒れないし、倒れてもすぐ起き上がる。レフェリーも体当たりの度に止めるわけではないから、「ここではこれが普通なんだ…」と衝撃を受けました。

とにかくひいてガチガチに守っておこう、とか、そういう試合もあるのかどうか、今後見て確かめなきゃ。
とにかくこの日の試合は、セリエA、ましてやオランダリーグではお目にかかれない全員猪突猛進サッカー!でした。
猛烈な体当たりの応酬をくらいながらもパスがスピーディーに通るさまは、エキサイティングな中に恍惚さえ感じるほどです。

ピッチの上を22人が縦横無尽に交錯する独特のリズム。
例えば4分の4拍子でも、頭でとらず、八分休符で半拍おいて後ろにアクセント。
「まるでタンゴだ!」体の中でピアソラの「リベルタンゴ」が聞こえてきました。
そう、タンゴ。旋律は郷愁を誘う「短調」。テンポは「MOSSO」。
大変なリーグに高原選手は飛び込んだものです。

この日は猛烈なタックルにつぶされ続けた高原選手。レフェリーともコミュニケーションが取れず、「言葉の壁」にもどかしさを感じているようにも見えました。
日本では経験することの出来ない、ピッチの上での激しい「タンゴ」。

彼があの世界で力強く情熱的に舞うことができるようになったなら、今までにあり得ない日本人サッカー選手が生まれることになりそうです。

   
 
    
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