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Vol.15 (2006/04/14)  映画「ウォーク・ザ・ライン〜君に続く道〜」

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『ウォーク・ザ・ライン/君に続く道』を鑑賞
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ジョニー・キャッシュという人を知っていますか?
1950年代、エルヴィス・プレスリーらと共にロカビリーの黄金時代を築き、
アメリカ音楽史でパイオニア的な存在であったというミュージシャン。
黒い衣装に太い低音、虐げられた者の思いを歌い、1955年から1972年の間に
26枚のアルバムをポップチャート入りさせた。
これはビートルズと同じ枚数だそうだ。
全世界で5千枚以上のレコードを売り、グラミー賞11個受賞、
そして作詞作曲家の最高の栄誉であるGMI賞を23個受賞。
カントリー音楽殿堂、ロックン・ロール殿堂、そして作詞作曲家殿堂。
すべてに殿堂入りしたのは、彼ただ一人だという。
死後2年経った今も、多大な影響を残し続けている
伝説の音楽アーティスト、ジョニー・キャッシュ。
(データ内容は公式パンフレットに基づく)

『ウォーク・ザ・ライン/君に続く道』は、
そのジョニー・キャッシュと、後に妻となるカントリー・シンガーの
ジューン・カーター二人の、かけがえのない関係を描いた映画だ。
少年時代から彼を敬愛していたマンゴールド監督が、
実際に生前のジョニー・キャッシュ&ジューン・カーター夫妻から話を聞き、
その深い愛を丹念に描いた、実話に基づく物語。
恥ずかしながらこの映画ではじめて彼を知った私は、
この映画でジョニー・キャッシュの詞曲に打たれ、
今にもアルバムを手に入れようと画策している。
それくらい観るものの心を熱くさせる映画であると、はなから伝えたい。

音楽を通して心の奥底で深い結びつきを感じながら、
既に別の人と結婚してから出会った二人は、
奥底の気持ちを抑制し続け、長い友情関係を築く。
ほかの誰も代わりが出来ない、互いがかけがえのない存在だと、
胸の内でわかっていながら結ばれない二人が10数年に渡って築く関係は、
とてもドラマティックで、深く、温かい。

この映画には命が乗り移っている。
そう感じさせる理由に、
全編にまたがって展開される音楽シーンの見事さがあるだろう。
ジョニー役のホアキン・フェニックスとジューン・カーター役のリーズ・ウィザースプーンは、
歌と楽器をものにするための合宿をして撮影に臨んだそうだ。
ジョニー役のホアキン・フェニックスは、ギターを自分の一部のように扱い、歌う。
魂をのぞかせる、それでいて抑制のきいた低音。
幼少の悲しい記憶を内包した翳りをたたえた瞳。
それは俳優が演じているというよりも、
本当にその時代にステージで歌う歌手そのものだ。

ジョニーを形容するとき、「カントリー界の重鎮」という言葉がよく使われるそうだ。
確かに曲調はカントリー。
しかし、「カントリー音楽」という分類から浮かぶイメージと、ジョニーの曲は大きく違う。
ジョニーの歌詞は凄まじい。
例えば、1968年、刑務所の囚人たちの前で行ったライブで歌った
「25ミニッツ・トゥ・ゴー」は、あと25分で刑が執行される死刑囚の心情を歌った曲。
その歌詞の一節はこうだ。

「子供のころお袋が言った
いい子でいるんだよ。拳銃なんかで遊んじゃいけない
だが、俺はリノで男を撃った。そいつが死ぬところを観るために…」

歌詞の主人公は一人称でありながら、あくまで伝承のスタイルで語られる。
そして映画に登場する他の殆どの曲の歌詞は、3人称で綴られていた。
曲調は、短調でなく長調で。
辛い誰かの物語を、長音階のメロディーに乗せて歌う。
悲しそうなことを悲しげなメロディーに乗せる安易な手法とは真逆だ。
俯瞰にたった距離感があるから余計に、心の叫びが飛び込んでくる。
誰かの物語という形のなかに、真の魂の声が聞こえる。
これはまさにブルースではないか!
映画の中のジョニーを観ながら、そして彼の演奏と歌を聴きながら、
ずっと感じていた。彼の歌はブルースなのだ。
曲調における分類と、曲そのもの、
そしてその曲を歌い演奏するミュージシャンの放つものが
必ずしも一致しないことを、ジョニーという存在が証明していると感じた。
作品データ
『ウォーク・ザ・ライン/君に続く道』
監督:ジェームズ・マンゴールド
脚本:ギル・デニス、ジェームズ・マンゴールド
音楽:T=ボーン・バーネット
出演:ホアキン・フェニックス、リーズ・ウィザースプーン、
ジニファー・グッドウィン、ロバート・パトリックほか



普通ならボツ写真?

“近況”
イタリア語検定3級の結果通知が先月末届きました。
開封するのに相当ドキドキしましたが、
ビリッと開けたら「合格」の文字。本当にほっとしました。
リスニング・筆記・伊作文という分野にわたる試験なのですが、
本人の想像に反して作文が高評価で喜!
東京駅でトッティと遭遇した驚きを膨らませて数百字に綴ったのですが・・・
そんな内容だけに、凶と出るか吉と出るかちょっと不安だったんです。
もちろん実話ではなく「おはなし」ですっ(^。^)
(2005.12.9掲載)

   
 
    
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