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Vol.10 (2004/12/24)  映画「世界でいちばん不運で幸せな私」

 映画『世界でいちばん不運で幸せな私』
やじうまプラスのオンエア−後六本木ヒルズにて(松井アナ撮影)

皆さんこんにちは。
メルマガ「テレシネフリークス!」11月26日配信号に寄稿した映画紹介コラムです。
今回は、『世界でいちばん不運で幸せな私』という映画について。
『アメリ』のアルバトロス・フィルムによるフランス映画ですが、どうもひっかかるタイトルですよね。
お時間のある方はどうぞおつきあいくださいませ。
(※メルマガからひと月遅れての掲載なので、今現在では東京での上映は終了しています。
東京以外では各地で上映されています。)

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 『世界でいちばん不運で幸せな私』
 原題をそのまま片仮名表記する映画が多い中、敢えて邦題を設定している。
原題は ‘Love me if you dare’ 
(dare=敢えて〜する 動詞と助動詞の境界線が曖昧な語。なので、このタイトルのようにdare単独で終わると思わせぶりな感じがするらしい。アナウンス部の帰国子女に訊きました。)
 新鋭監督の長編デビュー作品となったフランス映画。本国で140万人を動員する
大ヒットを記録したそうだ。

のる?のらない?
ゲーム仲間の二人の男女。ゲームを仕掛け、クリアできたら次は相手の番。
幼いときから二人だけのゲームを繰り返し、ゲームで結ばれてきた二人の愛の物語。
ということを知って直訳すれば、
「のるんだったら愛してよね」くらいの感じになるだろうか。

ジュリアンとソフィー、二人の愛情の物語。
そう「愛情の物語」だ。
先ほど愛の物語と書いたけれど、愛より愛情で決まりだ。
愛という程広くない。見返りを求めないほど崇高でもない。
私といてよ。俺といてよ。
たった一人の相手に注ぐ、マンツーマンの気持ちの物語だと思うから。

いじめ、病床の母との別れの予感、そうした子供の心の痛みをお互いに癒やしあうことがゲームのきっかけとして描かれる。
ゲームとは? 相手に条件を出す。出された方は実際にクリアする。その繰り返し。
条件とは? 他人の前で普通やらないことだったり、大人が困ることだったり、というようなイタズラの類。
ゲームで結ばれ、ゲームで支えられてきた二人。
子供の時はそれで良かった。
相手が自分に欠かせない存在になってしまいながら「ゲーム仲間」という呪縛から抜け
出せない二人は、愛情の告白さえうまくいかない。
愛してるとキスをすれば、それもゲームかと訝る。
はみ出さない大人になろうと別の普通の女を選んだのかもしれないジュリアン。
素直に気持ちを伝えられなかったソフィー。
互いに別々の人と結婚する。
しかし物語はここでは終わらない。
10年以上会わない日々が続いても、ゲームを再開せずにはいられない二人だから。

この映画を見る人たちはそれぞれ何を思うのだろう。
そんな風に他の人の感想を訊いてみたくなる映画だ。
二人が大人の二人として気持ちを確認するまでの時間はとても長い。
どうなるんだろう、とどきどきするのだろうか。それともじれてじれて退屈するのだろうか。
私はというと、ある一つの重要な言葉をこの二人に重ねていた。
結託。
正しい人たちからはみ出した子供である二人は、二人が同時に一緒にはみ出している
ことでこそ結びついていた。
二人だけではみ出すから心が踊るのでしょう。
一人じゃダメ。並びに他の人間もいらない。
二人だから心ふくらむ素敵な結託がある。
結託。なんて心満たされる言葉だろう。

他の人間がつけいる隙のない特別な結びつきの彼ら二人。
それにしたって、ゲームを永遠に繰り返すためには互いが互いのお題にのり続けなくてはならない。
だから彼らは、きっと子供の時から感付いていたはずなのだ。
次も必ずのってくれるという信頼の隣で裏切りへの恐れが首をもたげていることに。
だからゲームを切り出す方は切り出すたびに、「きっとのって!」と哀願しているはず
なのだ。
切り出すこと自体、それほど切実な仕業のはずなんだ。
だからたまらない。
結託を完遂するための覚悟はいつだって切迫しているんだ。

 せいぜい優柔不断くらいを理由に悩んでる態のおめでたいラブストーリーとは全く質の異なる愛情の物語。
これだけの相手とぐるになって生きてから死ねたらいいと思うのだった。

そして大事なもう一つ。
子供時代を演じる二人の可愛さたるや、
特にジュリアン幼少期、見たことがないくらい圧倒的に魅惑的だ。


★近況報告★
『ゴッドファーザー』のポスターを手に入れようと、海外サイトを物色しています。
ホームページの好きな映画欄はなぜか『シャイン』と『ジャック』になったままですが
(入社当時からほとんど更新されていないのがアダですね)
ここ数年も、きっとこれからも、ナンバーワンの座は『ゴッドファーザー』シリーズ(特に
part1と2)。
完全版、サガ、何度見返したことでしょう。
というところで考え事がひとつ。
なんでこんなにも何回も見返したくなるのか、
なんでこんなにも心のどこかに信念みたいにひっかかったままなのか。
自分で分析してみるべきかなあと。
ちなみにイタリアでのタイトルは、'Il Padrino'(イル パドリーノ)。
名付け親という意味からマフィアの親分を指すことになった言葉です。

■作品データ/『世界でいちばん不運で幸せな私』
監督・脚本・台詞:ヤン・サミュエル
プロデューサー:クリストフ・ロシニョン
音楽:フィリップ・ロンビ
出演:ギョーム・カネ、マリオン・コティヤール、チボー・ヴェルアーゲ、
  ジョゼフィーヌ・ルバ=ジョリー、エマニュエル・グリュンヴォルド、他
配給:アルバトロス・フィルム/2003年/フランス/94分

※梅田ガーデンシネマ他、全国で公開中

■『世界でいちばん不運で幸せな私』公式サイト
http://www.albatros-film.com/movie/sekai/home.html

   
 
    
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