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Vol.2 (2003/09/25)  映画「ライフ・オブ・デビッド・ゲイル」
 
今回取りあげる映画は、マスコミ試写ではなく、
文字通り自腹で プライベートで見た、現在公開中の映画である。

日比谷のシャンテ・シネ。
その日はいきなり来た猛暑だった。
鑑賞を終え、余韻をぶった切る下界に降りるのがもったいなくて、
もったりと映画館の階段を下りる。

久しぶりに、「観たその後」を大事にしたい映画であった。
感情の行き場がみつからない。
階段を下りきる。途端、
射るような太陽光線と煮えたような空気にまとわりつかれても、
それでも考えることをやめたくない。

大作と呼ばれるものとは、取りあげられる規模も頻度も違うが、
それでもひたひたと話題になっている映画、
というほどの認識だった。
8月23日現在、全国でもたった6館での上映。(※9月13日現在全国で5館)
観終わってみて、この映画がもっともっと話題にのぼらないことを
不思議に思う。
「感動して泣く」、といった類であらわせる感情は、
結構たやすく忘れていくことに気づいている人は多いだろう。
この映画は違う。いたたまれない。体内にとどまる映画だ。

《THE LIFE OF DAVID GALE》 ライフ・オブ・デビッド・ゲイル

アラン・パーカー監督である。
この人の映画といえば、高校1年生のときに渋谷スペイン坂のシネマライズで
『ミシシッピー・バーニング』を見たな。と思い出す。
『ミシシッピー…』が、黒人差別反対運動弾圧を描いたのに対し、
『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』は、死刑廃止運動をテーマに描いている。
それも、仕組み練り上げられたサスペンス作品として。
だから、映画を語るに素人の自分がこの映画を紹介するなど、至難の業だ。
なぜなら、ストーリーを言い過ぎることは、
これから見る人たちに向けて、映画を台無しにしてしまう事に他ならない。
よって、事の運びの詳細には触れず、
この映画のプロフィールに自分なりの解釈を一部添えて紹介してみる。

主人公デビッド・ゲイル役は、
『ユージュアル・サスペクツ』のケビン・スペイシー。
(『アメリカン・ビューティー』の、と紹介する方が良いのかもしれないが、
私にとっては『ユージュアル・サスペクツ』の、としたい。)

死刑囚デビッド・ゲイルの手記を書く、女性ジャーナリストのビッツィー役は、
『タイタニック』のケイト・ウィンスレット。

更に、製作として、俳優の二コラス・ケイジがアラン・パーカーとタッグを組んでいる。

「私は観客側の人間でしかあり得ない」、と感服するしかない秀逸な脚本は、
元哲学教授のチャールズ・ランドルフ。
これがデビュー作だそうだ。

前段は、「どういうこと?」という謎が、ある一定のテンポで次々と提示される。
それぞれが線になったような気になるとまた転回され、
加速度をつけて結末へのぼりつめる。
アンダンテから、アレグロ、プレスト、とテンポをあげて一気にコーダへ、
「ストーリー」は交響曲のような段階を踏んで、
加速しながらもある意味整然とクライマックスへ運ばれる。
なのに、それが悲壮なテーマと絡み合っていることのいたたまれなさ。これに尽きる。
というのは、終盤、ストーリー自体は急ピッチに展開しながらも、
「感情」には行き場がないのだ。
放出されないから、体内にとどまるしかない。

「証明と命題」
というふたつの単語が、尻尾をくわえ合って頭の中をくるくる廻る。
「ある命題を根本原理から導き出すこと」が証明だからといって、
命題は、証明されるために存在するわけではないだろう。
ならば、犠牲をしいてまで証明しなくてはならない命題とは?
というより、そもそもそうまでして証明することに道はあるのか。

人間の気持ちがあるから、「証明」は数学のようにはいかない。

ああ、ジレンマに陥る。
なにせ、その「証明と命題の正体」は、今ここでは言わない、言えない。

とにかく、ジャンル分け、カテゴリー分けするのが難しい、
というよりむしろ、果たして分類することにどれほどの意味があるのか、
と思わせられる作品だ。
言ってみれば、物凄く「映画的である」映画。

という言い方しかできない自分の表現能力がもどかしい。

「私はこの作品が論議を巻き起こす事を大いに期待している」 アラン・パーカー

誰かとこの映画のことを話し合うには、私にはもう少し時間が必要なようだ。

■作品データ/『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』
監督:アラン・パーカー
脚本:チャールズ・ランドルフ
音楽:アレックス・パーカー、ジェイク・パーカー
出演:ケビン・スペイシー、ケイト・ウィンスレット、ローラ・リニー、
ガブリエル・マン、マット・クレイブン、レオン・リッピー、ロナ・ミトラ、他
配給:UIP/2003年/アメリカ/131分

※7/26より日比谷シャンテ・シネ他にて公開中

■『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』公式サイト
http://www.uipjapan.com/davidgale

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