1984年、カナダ・モントリオールで20人の大道芸人が集結し誕生したシルク・ドゥ・ソレイユ。フランス語で「太陽のサーカス」という意味を持つ彼らは、それまでのサーカスに限界を感じ、ストリートパフォーマンスを融合させたまったく新しいスタイルを確立しました。既存のサーカスとの違い――それは動物を一切使わないこと。体ひとつですべてを表現するという究極の表現方法を取り入れ、より芸術性を高めていったのです。そんな彼らの演技はまさに幻想的。観客は現実を忘れ、舞台上で繰り広げられる異次元の物語に入り込んでしまいます。これまでに5000万人以上が鑑賞し、今年だけでも約700万人もの人々がその世界に酔いしれました。
中でも人気なのが、べラージオホテル内に、なんと100億円をかけオペラハウスをモチーフに作られた劇場で公開されている「O」。その特徴はなんと言っても、ステージの下の巨大プール。その水深7.6m、2階建てのビルに相当する水を使用し、世界各国から集まった81名のアーティストが縦横無尽に魅惑的で幻想的な世界を表現しているのです。1800人収容可能な劇場は常に満員で、ストリートパフォーマンスから最も贅沢なオペラに至るまで、演劇のあらゆる魅力を取り入れたエンターテインメント作品です。 更に、2004年に公演を開始した「KA」は、「O」を凌ぐ187億円もの制作費を投入。世界最大の可動ステージで繰り広げられる豪華絢爛、かつアクロバティックな演技はシルク・ドゥ・ソレイユの中でもNo.1のスタントショーであるといわれています。アジアの要素をふんだんに取り入れたこのショーは、子供からお年寄りまで誰もが楽しめる一大娯楽作品なのです。
現在、シルクには総勢900名のアーティストが在籍しています。年齢制限は無く、下は5歳から上は69歳と実に幅広いもの。彼らのほとんどは100倍といわれるオーディションを勝ち抜いた ツワモノたちで、その経歴も、オリンピックのメダリストやトップダンサーなど多彩。以前スマステーションで紹介した「KA」の準主役、高橋典子さんは世界選手権を7度も制覇したバトントワラー。彼女の場合は、オーディション免除という特例で入団しました。オーディションを免除されるのは、年間でもたった2、3人だといいます。 そんなシルクの最新作「LOVE」の裏側をのぞいてみましょう。劇場には、約30mのパノラマビデオスクリーンなど合計6つの巨大モニターとスクリーンが設置されています。これまでのシルクのショーは、出演者がメインであったためここまで巨大なスクリーンを用いたショーは今回が初めて。ビートルズの映像やグラフィックなどをふんだんに使用し、彼らが活躍した1960年代を表現するために、ハイテクな映像はあまり使用せず、敢えてシルエットや水彩画を多用し、自然な色合いで見せています。 156億円をかけて造られたドーム型シアターの特徴は、サウンドにあります。観客全員に音楽を体で感じてもらうため、何と座席のひとつひとつに、6つのスピーカーを設置しているのです。つまりこの劇場には合計12000個のスピーカーがあり、全ての音がありとあらゆる方向から立体的に聞こえるパノラマサウンドシステムとなっているのです。その効果は絶大で、ビートルズを聴くのに世界一の環境とまで言われています。
「このショーのためだけに我々はオリジナルサウンドを編曲したのでここに来れば皆さんがこれまで聞いたことのない初めてのビートルズ音楽に出会うでしょう。」 (セットデザイナー:ジャン・ラバス) 今回のこのステージでは24種類の場面転換があり、140通りのパフォーマーたちを登場させる仕組みになっています。
「このショーは単なるビートルズ物語ではなく、彼らが作り上げたあの独特の世界観を表現するショーにしたかったのです。彼らが感じていた心情を波乱万丈の放浪記ともいうべきスタイルに仕上げました。」 (ステージディレクター:ドミニク・シャンパーニュ) 62名のパフォーマーのために用意された300着以上の衣装は、毎日、補正や修理が行われ管理されています。すべての衣装は手作り。布を染めるところから、生地の柄まで全てオリジナルなのです。「LOVE」の衣装のみならず、全てのショーの衣装をデザイン、製作しているのが、カナダ・モントリオールにあるシルク・ドゥ・ソレイユ本社のコスチュームルーム。現在300名のスタッフによって、新たな衣装のデザイン、古い衣装のメンテナンス、予備の衣装の製作などが行われています。この衣装製作ルームには、パフォーマーの身体的特徴がすべて管理されており頭の型や足の型もすべて保管されています。 シルク・ドゥ・ソレイユでは、どんな役柄であれ、日本の歌舞伎同様パフォーマーたち自らメイクを行います。オーディションの難関を勝ち抜き役を得たパフォーマーたちは、トレーニングと同時にメイクの勉強を徹底的に指導されるのです。
「シルクは常に新しい作品を作り出していくので衣装に関しても常に斬新さが求められます。新しいものを作る上で困難はつきものですが世界一のショーですから当然です。」 (コスチュームデザイナー:アラン・スプーナー)
「アクロバティックのアーティスト達は体の筋肉のことは良く知っているのですが、顔の筋肉についてはその使い方を知らないことが多く、メイクを教えながら色々な表情の作り方もココでは教えます。メイクをしたのに表情が死んでいたら、ただの仮面になってしまいますから。」 (メイクデザイナー:ナタリー・ガグネ)
「シルク・ドゥ・ソレイユは単に多くのショーを世に送り出しているだけなのではありません。 我々がお客さん一番感じてもらいたいのは夢の大きさなのです。」 (エグゼクティブプロデューサー:フランコ・マセロラ)
先月6日、香港マカオにオープンした一大カジノホテル「ウィンホテル」。このホテルを作り上げたのが、現在のラスベガスを築いた伝説の男、スティーブ・ウィンです。全米で知らない人はいないといわれる人物でありながら、1993年、娘のケビンが誘拐事件にあい、それ以降メディアへの登場を避けるようになってしまったウィン。しかし今回特別に、スマステーションの独占インタビューに応じ、香取編集長のギモンに答えてくれました! ――ミスター・ウィンにとってお金とは? 「お金を軽視することも、固執することもしません。人生の中で自分の本当に好きなことをやることがもっとも重要です。そうすればこの上ない幸福を感じ、成功にもつながるでしょう。つまり仕事は職業というより楽しみなのです。成功して大金が入れば絵画などを購入することもできます。寄付や重要な関心事の支援に多額のお金を費やして、人助けをすることもできます。人生に満足を得られます。これがお金に対する考え方です。自分が好きだったら大丈夫、豊かな人間になれるはずです。自分が嫌いな人間はこの上なく惨めです」 ――引退を考えたことは? 「私は64歳で毎年50日スキーをしています。引退はまったく考えていません。この業界では私はまだ子供です。シンゴがマカオかラスベガスに来てくれたら一緒に大騒ぎしたいな。」 ――自分の名前を冠にしたホテルを造ったのはなぜ? 「新ホテルを“ウィン”と名づけた場合の調査を実施したところ、ベラジオやミラージュをつくったスティーブ・ウィンだと知り、驚くほどの反応を得ました。信頼できるブランドだからこのホテルに泊まりたいと言うのです。しかし、やみくもに自分の名前を付けるつもりはありません。特別なプロジェクトと場所にのみ使用します。」 ――ミスター・ウィンの目標は?夢は? 「私の年齢になったら、人生の根底にある真実に気づくでしょう。人生は旅ですが、特定の目的地を目指すものではありません。旅の道のりを楽しむことなのです。旅の途中数多くのすばらしい出来事に出会います。(人生は)旅をする行動であって到着地点ではないのです。今後も仕事を楽しみながら続け、難問に挑戦しながら世界中の人々に喜びを与えたいと思います」 ――ニッポン進出は考えてますか? 「イエス!」 ――その場所は? なぜですか? 「東京です。世界でもっともエキサイティングな都市のひとつだから。でも日本で私を受け入れてくれるところがあればどこでも結構!日本で歓迎されてビジネスが展開できたら、私の人生の中でもっともすばらしい1ページになります。日本人のホテルに対する感性は、完璧だと思います。日本で事業を展開できるとすれば、芸術性の高いものを創造しなければなりません。もちろん、ダイナミックな要素をあまねく取り入れ、本物の楽しいエンターテイメントも必要です。しかし、それよりすばらしい要素は優美さです。日本の芸術、日本人女性、日本のファッションが見せる優美さです。感性豊かで洗練されたプロジェクトになるでしょう。騒々しいテーブルも大げさな広告も必要ありません。まさに我々の手がけたいプロジェクトです」 気さくにカトリノギモンに答えてくれたミスター・ウィン。そんな彼から香取編集長にメッセージが・・・。「君にはひとつだけ有利なものがある。何よりも威力を発揮するもの…時間だよ。時間は君の味方だ。存分に楽しんで使うがいい。君の将来は無限だ。これから何でもできるだろう。特に君はすばらしいスタートを切っているからね。幸運を祈る!」