街道を走ると、見たことのない景色が広がりました。
見渡す限りの段々畑です。人々は数千年の時をかけて、営々と畑を耕して来ました。そして、まさに天に至る光景をつくりあげたのです。
段々畑の中に村を見つけ、立ち寄ります。出会った老婆に、素晴らしい畑ですねと声をかけると、思いもよらない答えが返って来ました。「畑をここまで増やして来たのは、土地が痩せて物成りが悪いからだよ」と。シンプルな事実に胸を突かれました。
「貧しくても、私たちはこの村で生きていく。働いてさえいれば、きっと良いことがあるさ」と、畑の男たちが語ります。
別れ際、村の婦人たちが言いました。「何もない村に来てくれてありがとうね」と。
そのまっすぐな声が、いつまでも心に響いていました。

♪　姉への手紙 / 伍芳