モロッコ中部。アルジェリアとの国境近くに広がるシェビ砂丘の夜明け。空の主役が月から太陽へと代わります。
かつてこの国に魅せられたアメリカ人作家ポール・ボウルズはこう記しました。「砂漠を支配するのは絶対的な沈黙である。孤独とは記憶を前提とするものであるが、この沈黙の世界では記憶さえも消え失せてしまう…。」
昇りきった太陽のもと、遊牧民が進んでゆきます。その姿は、かつて砂漠を旅した駱駝の隊商を髣髴させます。水なき大地、やきつける太陽、これほどまでに苛酷な道が他にあっただろうか。そこへと踏み出させたのは、哀しいまでの雄々しさと、その果ての歓びであったに違いありません。カスバ街道、厳しい自然に生きる人々の想いがつのる街道。

♪　瞬間よ（エンディングテーマ曲）／Vocal:工藤亜紀