マラケシュからおよそ１３００キロを走ると、蜃気楼のように砂丘とカスバが浮かび上がって来ました。メルズーガ。アルジェリアとの国境近く、砂丘に抱かれるようにある町です。人々は、ある時は砂丘と戦い、ある時は砂丘に守られ暮らしを営みます。
ギャラリーに、砂漠に暮らす人々を描いた絵が飾られていました。画家が変わった絵の具をつけ筆を動かします。まだ下書きのようだが…。ガスバーナーを取り出し、絵を乾かします。すると…、炙り出しです。絵の具はオレンジのしぼり汁。これは昔からベルベル人が、秘密の文書に使った手法なのだと教えてくれました。
穏やかな表情で横たわる砂丘に身を置いてみます。やがて、鮮やかな夕焼けが、空を覆い始めました。

♪　The Plateaux of Mirror／Harold Budd / Brian Eno