モロッコ中部の街道で、砂漠の中に並ぶカスバが目につきました。しかし、どこか雰囲気が違う…。これは映画のセット。天候が安定しているこの一帯は、モロッコのハリウッドと呼ばれ、世界中から撮影隊がやってくるのだといいます。街道をゆく人々。彼らの暮らしはカスバと共にあるのです。
ワジと呼ばれる涸れた川の畔に壮大なカスバがありました。日干し煉瓦で作られたどっしりとした佇まい。カスバは常に外敵の攻撃から人々を守ってきたのです。少年が、これは紙幣にも印刷されているカスバなのだと我がことのように自慢気に教えてくれました。
スクーラの町は、古くからの街道筋の町です。『バラの水』とフランス語で書かれた店を訪ねるとオーガニックの薬屋さんです。自慢はこの一帯で栽培されている、バラの花弁を蒸溜したローズ・ウォーター。クレオパトラも愛用した化粧水なのだと親爺さんが顔を綻ばせました。これも、駱駝の隊商が運ぶ交易品のひとつなのでした。

♪　Eros et Thanatos／ Sapho