モロッコ中部。高アトラス山脈の山間を進みます。かつて駱駝の隊商が進んだカスバ街道。この地に暮らす人々が、近くの里にカスバがあるといいます。
トゥルーエトの里です。村人が教えてくれました。１９世紀、この地方の豪族が住まいとして建てたカスバだと。威厳を漂わす外観は、大分痛んでいるように見えます。中に入ると…。沈黙と無限…。この壮麗なアラベスク装飾は、２０世紀ここを手に入れたマラケシュの領主がその富に飽かせて、改装したものだといいます。しかし１９５６年、モロッコ独立に伴い領主の財産は没収され、廃墟になってしまったのだと村の青年が語ってくれました。歓びと哀しみ、カスバに宿る歴史の断章です。

♪　The Sheltering Sky Theme／坂本龍一