『キングオブコント』でなめた苦汁も糧にする、群青団地の次なる展望|お笑い芸人インタビュー<First Stage>#23(後編)

若手お笑い芸人インタビュー連載 <First Stage>

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2021年結成の若手コント師・群青団地。令和ならではの設定と、たしかな演技力で注目を集め、『ツギクル芸人グランプリ2023』ではファイナリストになった。

しかし今年の『キングオブコント』は、まさかの2回戦敗退。日本一のコントを決める大会の壁は分厚かった。

芸人の初舞台を振り返る本連載「First Stage」。今回は、群青団地初の賞レース決勝となった『ツギクル芸人グランプリ』や、初めての挫折だと語るKOC敗退、そして今後の展望について聞いた。

【インタビュー前編】

『ツギクル芸人グランプリ2023』で注目を集めた、群青団地の初舞台|お笑い芸人インタビュー<First Stage>#23(前編)

斬新な設定に自信があったツギクルの勝負ネタ

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左から:福田智哉、横颯太

──7月にフジテレビで放送された賞レース『ツギクル芸人グランプリ2023』の決勝に進出しました。芸歴3年目で、初めての賞レース決勝はいかがでしたか。

福田 楽屋がわりと和やかだったので安心してたんですが、本番はさすがに緊張しました。ただ、『オンライン』というネタはセリフがないので、緊張がコントに影響することはなくて、そこはよかったですね。セリフを飛ばすのが一番心配なので。

 けっこう手応えもあったんですよ。ネタ終わり、袖でハイタッチしたよな?

福田 うん。正直、ファイナルステージに行ったなと思ってました。

 僕らはBグループのトップバッターだったんですが、結局そのグループはひつじねいりさんが決勝に行った。

──群青団地のコントが新鮮な設定と、繊細な演技力で魅せたのに対し、ひつじねいりの漫才はパワープレイで押し切りましたね。

 すごかったですね。僕らは斬新な発想のネタで勝負するつもりだったので悔いはなかったですけど……自分たちがどういう人間なのかネタで伝えられなかった。そこは反省ですね。
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──同期のツンツクツン万博は、衝撃的なネタでファイナルステージに進出しました。同期の躍進は悔しいものですか?

 もちろん悔しかったですけど、それはツンツクツンに負けたからではなくて。彼らが結果を出したのに、僕らは爪あとを残せなかった。そのことが悔しかったです。だから、彼らが『ピッツァマン』のネタでバズって、テレビに呼ばれたりするのは純粋にうれしいですね。

福田 僕らとツンツクツンはもともと仲いいんですよ。

 そうそう。ツギクルが決まったときも、4人でごはん行って決起集会しました。だから彼らの活躍は普通にうれしいですね。

「気まずい瞬間」をコントにしたい

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──おふたりのコントは演技力を見せるネタが多いように思います。影響を受けた芸人はいますか。

福田 相方は、かが屋さんが好きで。「これおもしろい」ってずっと言ってたのは覚えてます。僕は相方に誘われて芸人になるまで、お笑いにほとんど興味がなかったんでわからないですが。

 かが屋さんはそうですね。お笑い始めようって思った2019年ごろにずっと観てました。演技力がすごくて、マイムだけで状況説明をさせるのもすごいなと尊敬してました。

──今日は奇しくもかが屋っぽい服装での登場となりましたね。

 恥ずかしいわっ!

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福田 さすがにこの格好でかが屋さんへの憧れを話すのは照れますね……(笑)。

 でも本当に、かが屋さんのおかげで、ああいうお笑いが好きだって気づかせてもらった部分はあって。僕らは明確なボケで人を笑わせるタイプの芸人ではない。

──ネタを作る上で大事にしている感覚はありますか。

 僕はけっこう「気まずい瞬間」が好きなので、そういう情景をコントにする節はあります。あと、最近はふたりがしゃべってるときの音というか、音圧を意識してますね。

──どういうことでしょうか。

 コントのキャラクターが、テンポよく会話のラリーをしてるのがリアルじゃないなって思うようになって。感情が昂ぶった人間同士って、お互いの言葉が被さるじゃないですか。その感じを、声の音圧で表現できないかと考えながら台本を書くようになりました。あと、静かなシーンと盛り上がるシーンで音圧にメリハリをつけるようになった。そうするとウケやすさが全然違う。ネタ合わせからじゃなくて、ネタを書くときからそこは意識してます。
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福田 相方はネタ合わせでも丁寧に教えてくれるんで、やりやすいです。

 でも、福田は演技が本当にうまいんですよ。誘ったときはむしろ下手だろうなと思ってたくらいなので、そこはラッキーでした(笑)。コミカルな動きもできるし、ちょっとムリがありそうなマイムでも、要望を伝えて練習したら、そつなくできるようになる。

福田 相方はコントの状況やキャラクターのことを言葉にして説明してくれる。だから僕も理解できて、演技も自然とできる感じです。染み込んだ状態でキャラの感情に入りきれれば、自然と演じられる。

横 逆に僕のほうが不器用なんですよ。どう動いたらいいかっていうイメージが頭にはあるんだけど、それを自分の体では表現できない。だから難しい動きのあるキャラクターはいつも福田に頼んでますね。

相方の書いたネタがスベることに納得できない

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──群青団地はツギクル決勝進出や、事務所ライブ『月笑(げつわら)』での躍進など、波に乗っていますが、一方で、今年の『キングオブコント』は2回戦敗退となりました。早々に敗退したのは、おふたりにとっても予想外ですよね。

 うーん、たしかに結果が出た瞬間はめちゃくちゃ悔しかったし、納得できなかったです。ライブに出るのもイヤなくらい。でも2回戦敗退以降、ライブに出るたびに先輩がイジってくれたんですよ。自分たちで言うのもアレですけど、今までの僕らって、わりとトントンとうまく行ってて、イジりにくい存在だったんです。

──芸人としてはイジられたほうがおいしいですよね。

 はい。まだ芸歴3年目ですけど、これまで明確な挫折がなくて、イジりにくかったと思うんです。だから、早いうちに負けるのも悪くないと知れたのはよかったです。敗北も笑いに変えられるのが芸人だと思うので。

ネタに関しても「これが自分たちらしいコントだ」って決めつけてたけど、まだ何もわかってなかったですね。自分たちらしさを残しつつ、いろんなファイトスタイルを身につけようと思いました。

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──福田さんはいかがでしたか。

福田 正直めちゃくちゃ手応えあったので、信じられなかったです。普段感情を表に出すタイプじゃないんですけど、気づいたらTwitter(X)に、「きつ」の2文字を投稿してました……。

 今、感情を表に出すタイプじゃないって言いましたけど、結果が悪いとき、福田は僕以上に悔しがるんですよ。芸歴1年目だったら一喜一憂するのもわかるけど、いまだに毎回新鮮に悔しがってるの見て、すごいなって思います。

福田 相方のネタがおもしろいから、なんでそれを評価してくれないんだろうって悔しくなるんですよね。自分がどうこうっていうより、相方の書いたネタが伝わらないのが納得できない。

 そう言ってくれますけど、一個だけ根に持ってることがあって。ツギクルでやったネタ、福田は最初「いや、どうなんだろうねぇ……」って否定的だったんです。

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福田 しゃべらないし、明確なボケのないネタじゃないですか。僕はコテコテの漫才とかを観てきたので、台本だけだとあのネタのよさが理解できなかったんです。

 どこで「このネタはおもしろい」って気づいたの?

福田 えっと……ライブでウケたときです。だから僕も客と同じタイミングで気づきました。

 客が笑って気づいたんなら、客より遅いから。福田が一番最後に気づいたんだよ(笑)。

ネタを大事にするためにやるべきこと

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──まだ芸歴3年目のおふたりですが、これからのビジョンはありますか。

 今はとにかく僕らのことを知ってもらう時期だと思います。お笑いを始めたばっかのときは、ネタだけで評価されたいと思ってたんですよ。東京03さんみたいに、ライブだけでも食っていけるようになりたいって。

でも、ライブにたくさん出させてもらって気づいたんですよね。ネタをお金にするのはすごく難しい。だから、ネタを大切にするためにも、テレビやYouTubeもがんばって、お笑いで食べていけるようにならなきゃいけない。ネタにこだわらず視野を広げることが、結果的にネタを大事にすることにつながるのかなと。

──お笑い芸人にとって「売れる」という言葉の意味も変化してきたと思います。群青団地にとっては、どういった売れ方が理想ですか。

 僕の理想はアルコ&ピースさんです。いきなり人気者になったわけじゃなくて、ずっとなんかいいところにいて、気づいたら確固たる地位を築いているという。あれはすごいですよね。

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──横さんは『アルコ&ピースのオールナイトニッポン0(ZERO)』(ニッポン放送)リスナーだったんですよね。

 そうですね、ずっと憧れです。あのおふたりがラジオをずっと続けてるのも、ご本人たちがやりたいことだからっていうのが伝わってくる。大儲けできなくても、やりたいことを続けるために、いいラインを維持する。あのかたちが理想です。

──群青団地もArtistspoken Podcastで、ラジオ配信『新夜零時を過ぎたら』をしています。ラジオの仕事も広げていきたいですか。

 正直めちゃめちゃやりたいです。でも相方がしゃべるのが得意じゃないんで(笑)。

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──前編で話していた、誰にも伝わらない高校時代のふたりだけのノリを発信するのも実はアリなんじゃないかと思いますが。

福田 本当にリスナーの方々を置いてけぼりにしちゃうんじゃないですかね……。

 でも、たしかに自分たちだけのノリは出していきたいですね。

福田 YouTubeもそっちなんですかね。自分たちのおもしろいと思うことをそのまま出すというか。それができたらいいですね。

 でもやっぱりキングオブコント優勝が今一番の目標です。やっぱりコントが好きなので、そこで一番を獲りたい。福田も優勝したいよね?

福田 もちろんです!

 同じ気持ちでよかったです(笑)。

文=安里和哲 撮影=青山裕企 編集=後藤亮平、田島太陽

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群青団地(ぐんじょうだんち)
横颯太(よこ・そうた、1996年10月5日、埼玉県出身)と福田智哉(ふくだ・ともや、1996年10月17日、愛媛県出身)のコンビ。2021年結成。芸歴3年目にして『ツギクル芸人グランプリ2023』(フジテレビ)ファイナリストとなる。冠Podcast『新夜零時を過ぎたら』がArtistspoken Podcastにて毎週火曜日深夜0時に更新中。YouTube『群青団地チャンネル』でネタや企画動画も配信中。

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【後編アザーカット】

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