『ツギクル芸人グランプリ2023』で注目を集めた、群青団地の初舞台|お笑い芸人インタビュー<First Stage>#23(前編)
結成3年目にして、『ツギクル芸人グランプリ』ファイナリストとなった若手コント師・群青団地。
決勝では、オンラインゲームを舞台にした男女の恋という現代的な設定と、ゲームキャラクターを再現する見事な演技力で見せるネタが注目を集めた。
次世代のコント界を担うであろう勢いに乗るふたりに、まだ記憶に新しい初舞台までの道のりの話を聞いた。
若手お笑い芸人インタビュー連載<First Stage>
注目の若手お笑い芸人が毎月登場する、インタビュー連載。「初舞台の日」をテーマに、当時の高揚や反省点、そこから得た学びを回想。そして、これから目指す自分の理想像を語ります。
「ふたりきりが一番落ち着いた」高校時代
左から:横颯太、福田智哉
──群青団地は高校の同級生コンビですが、当時からふたりともお笑い好きだったんですか?
横 僕は好きでした。テレビっ子だったんでお笑い番組は観てて。でも高校時代はネタ番組がなくて、『アメトーーク!』(テレビ朝日)とか『ゴッドタン』(テレビ東京)でしたね。
福田 僕はほとんど知らなくて。当時は音楽とゲームが好きでした。学生時代は趣味でギターを弾いてて、完全に文化系でしたね。
横 一緒にスタジオ入って遊んだりしてましたね。仲よくなったきっかけも音楽で。高1で同じクラスになって、最初の会話が好きなバンドの話。MAN WITH A MISSIONとかFACTが好きっていうので盛り上がって。
福田 ELLEGARDENとかBUMP OF CHICKENの話もよくしてた。
──お笑いが共通の趣味というわけでもなかったんですね。
福田 お笑いの話はしたことなかったですね。でも、今思うとふたりだけのお笑いというか、ずっと変なノリやってました。ふたりしかわからないニュアンスでふざけてた。
横 学校でもずっとふたりでいた。授業が終わっても教室に残って、ずっとダベってて。でも、僕ら高校を出るまで、お互いにちゃんとした話を一回もしたことがないんですよ。
福田 卒業するまで、お互いのことほとんど知らなかった(笑)。
横 大学生になってはじめて、福田が何を考えてるのか、どんな性格なのかがわかるようになった。
──共通の友人はいなかったんですか?
横 いましたけど……。お互い人見知りだったので、福田以外とは上辺でしゃべってる感覚があった。
福田 「やっぱここ落ち着くよな〜」って言ってた(笑)。僕は中3のときに愛媛から埼玉に引っ越して、中3はずっと友達がいなかったんです。
横 福田に自分と同じ匂いを感じて仲よくなりました(笑)。
恋人も嫉妬するほどの友情
──横さんは社交的な印象を受けますが、人見知りだったんですね。
横 高校で人見知りになりましたね。小中学生のときは、9年間ほぼ同じメンバーで友達もけっこういたんですけど、高校に行って人間関係がリセットされて急に不安になって。大人になっていくタイミングと、環境の変化が重なって、人見知りになった。
福田 でも、(横は)彼女は途切れてなかったけど。
横 なんか常にいましたね……付き合って、別れて、次の恋をして……。
──でも、横さんと福田さんがふたりだけのノリでずっと一緒にいると、恋人も嫉妬しませんか。
横 あぁ、僕の彼女はそういうことなかったですけど、福田が唯一付き合ってた子が、僕に嫉妬したことはありましたね。「私の智哉を取らないでよ」って僕に長文LINE送ってくるようなタイプで。僕も負けずに「福田はお前のものじゃねえから」って言い返して、バチバチに取り合ってました。
福田 だから僕はちょっとうれしかったですね(笑)。
横 福田はずっとその子との関係性に悩んでて、俺もそれなら別れたほうがいいよってずっと言ってたんです。
福田 ミスドで相談したときがあって。僕が別れを決意した瞬間、相方がスマホで僕と彼女の思い出の画像を見せてきたんですよ。
横 スライドショーで見せた。
福田 「別れろ」って言いながら、思い出の写真を見せてくるのが怖かった。
横 別れるって決意した瞬間に思い出を見せたら、心揺らぐのかなって気になって。そしたらボロボロ泣き出して。
福田 結局、そのタイミングでは別れられなかったです(笑)。
笑いをやると決めて衝動的に大学中退へ
──大学は別々のところに進学しますね。
横 それは地頭の差です。
福田 僕が学年最下位で、相方がトップだった。勉強となると集中力がまったく出なくて。
横 テスト前もまったく勉強しないんです。前日になって慌てて「ヤバいから教えてほしい」って言うから、早朝から集まっても福田は寝てる。
福田 僕が寝てる間も相方はマジメに勉強してて。僕の分まで頭よくなってくれました。
──経歴を見ると、横さんは明治大学を中退していますね。これは何があったんでしょうか。
横 就活中に自己分析してたら、お笑いがやりたくなって。やると決まったら、このまま卒業しても意味ないなと思って辞めました。とはいえ、最初は勇気がなくて、就職とお笑いの折衷案で、よしもとの企業説明会に行ったんです。でも、MCをしてたおばたのお兄さんがめちゃめちゃおもしろくて、「やっぱ芸人すごいな」と思って大学を辞めました。説明会終わりにすぐ福田にLINEして「NSCの説明会行ってみない?」と誘って。
福田 僕は「NSCって何?」くらいの感じでしたけど、一応ついていきましたね。ノリで願書を書かされそうになったんですけど、そのときはさすがに断りました。でもその夜に……。
横 ドライブに誘って地元の夜景が見える山に行ったんですよ。展望台で「お笑いやりたいわ。やるなら一緒にやりたいんだけど」って伝えて。
──見取り図の盛山(晋太郎)さんもそんな話をされていました。リリーさんを夜景の見える山に連れてって芸人に誘ったって。
福田 まったく同じですね(笑)。でも僕は「人前に出るのは恥ずかしいからムリ」って断りました。
横 普通、断れるシチュエーションじゃないよ(笑)。それでひとりで養成所に入ることにして、卒業半年前に中退して、アルバイトでお金を貯めて、2020年4月に入学しました。
──横さんは子供のころから、一度決めたらテコでも動かない性格だったんですか。
横 全然そんなことなくて。むしろそれまでの人生は我を出してこなかったんです。自分としてもここまで頑なになれることがなかったんで、自分でもこの想いは大事にしないとな、と思ったんですよね。
「俺にはお前しかいない」
──横さんは最初NSCの説明会に行ったのに、どうして太田プロダクションに入ったんでしょうか。
横 改めてどこの事務所がいいか、ネットで調べたんです。そしたら「尊敬できる芸人のいるところ」ってアドバイスを見かけて、じゃあアルコ&ピースさんのいる太田プロにしようと。『アルコ&ピースのオールナイトニッポン0(ZERO)』(ニッポン放送)を聴いて、憧れてたんです。生放送なのにどこかコントっぽくて、伏線を回収するのがおもしろくて。
──誘いを断った福田さんはどう過ごしていましたか?
福田 公務員試験を受けてたんですけど、2回連続で落ちちゃって。その間も相方からはことあるごとに誘われてて、2回目落ちたタイミングで「俺にはお前しかいない」「イヤなのはわかってる。俺についてくるだけでいい。全部俺がやるから」と言われたんです。
──熱いですね。
福田 2年経っても僕とやりたいと思ってくれてるのもうれしかったし、親友がここまで言うならってことで組みました。
──横さんは養成所で相方を見つけられなかった?
横 何回か組みましたけど、やっぱうまくいかなくて。卒業間際にも解散してしまいました。いよいよ誰も相手がいない、というタイミングで福田が「やる」と言ってくれた。それで事務所の人に「外部の友達と出てもいいですか」って頭下げたらオーケーしてもらえて。
──養成所に入ってない人間が卒業ライブに出たら、同期はざわつきますよね。
福田 ざわついてました。みんなちゃんとお金も払って通ってたので、僕もちょっとうしろめたくて……。
横 しかも福田と組んだとたん、養成所の中で1位になっちゃって。養成所時代は僕も成績が悪かったから、福田が天才だと思われてました。ネタも書いてないのに(笑)。
──なぜ福田さんと組んだらすぐに結果が出たんでしょうね。
横 僕の作るネタ自体はそんなに変化してないと思うんです。だから、福田が僕のネタをよく理解してくれて、同じノリでできたからかもしれない。高校時代からずっとダベってて、お笑いの感覚が近くなってたんだと思います。
コロナ禍の、ほとんどウケなかった初舞台
──じゃあ卒業ライブが初舞台ですか。
横 いや、初舞台時代は別なんですよ。2021年3月が卒業ライブだったんですけど、その1カ月前にヤマザキモータースさんが主催してる『モータースLIVE』に出させてもらいました。
──ヤマザキさんは太田プロの養成所である「太田プロエンタテイメント学院」の講師も務める芸人ですね。
横 はい。僕が養成所に入ったのが2020年、コロナ禍が始まったころで、客前にほとんど出ないまま卒業シーズンになってしまった。それでヤマザキさんがルーキーライブを主催してくださって。それが初舞台になりました。
──どんなネタをやったんですか。
福田 ゾンビのネタです。YouTubeにも上がってて、ゾンビウィルスに感染した男が、恋人の浮気を知って驚くと正気に戻るっていう。自分たちでは気に入ってるネタなんですけど、最初は全然ウケなかったですね。
横 こんなにウケないんだな……って面食らいましたね。ネタ合わせではふたりでゲラゲラ笑ってたのに。なんなら僕らが一番気に入ってたところがまったくハマらなかった。順位は2位だったんですけど、全然ダメでした。
──福田さんは芸人としてネタをやること自体、初めてだったんですよね。かなりアガったんじゃないですか?
福田 それが心配だったので、前日の深夜に友達を呼び出して、ネタを見てもらったんです。夜中の公園でそいつひとりに向けてやったんですけど、緊張してネタが全部飛んじゃって……。
──友達ひとりの前でもそこまで緊張したら、翌日の本番が怖くなりますね……。
福田 いや、むしろ「こんなできないんだ……」と事前に知ったおかげで心構えができました。コントやるときは、こっ恥ずかしさを捨てて、その世界に入り込むしかないんだな、と。そのおかげで本番はなんとかネタはできた。でも、コントなら役に入り込んで大声出せばなんとかなるけど、漫才はダメでしたね……。
横 1年目のときにM-1に出たんですけど、福田が本番でめちゃめちゃ飛ばして、僕が代わりに言ってあげましたから(笑)。それでM-1は今のところいったん諦めましたね。
福田 自分自身のまま出る漫才と、役になればいいコントは全然違った。人からどう思われるかを気にしながらずっと生きてきたんで、その点、自分と関係ない人間を演じるのは意外と楽しかったです。芸人なってからだいぶ生きやすくなってきた。
横 平場で話を振られると、いまだに顔真っ赤になってるけどな。
福田 そこはなかなか慣れないです……。
文=安里和哲 撮影=青山裕企 編集=後藤亮平、田島太陽
群青団地(ぐんじょうだんち)
横颯太(よこ・そうた、1996年10月5日、埼玉県出身)と福田智哉(ふくだ・ともや、1996年10月17日、愛媛県出身)のコンビ。2021年結成。芸歴3年目にして『ツギクル芸人グランプリ2023』(フジテレビ)ファイナリストとなる。冠Podcast『新夜零時を過ぎたら』がArtistspoken Podcastにて毎週火曜日深夜0時に更新中。YouTube『群青団地チャンネル』でネタや企画動画も配信中。
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【前編アザーカット】
【インタビュー後編】
『キングオブコント』で舐めた苦渋も糧にする、群青団地の次なる展望|お笑い芸人インタビュー<First Stage>#23(後編)