今週は新世代のふたりの音楽家、古里愛さんと松井秀太郎さんをお招きしました。
ピアノの古里愛さんは現在13歳。アメリカの名門、バークリー音楽大学に史上最年少の12歳で入学し、奨学生として在籍しています。12歳で大学に入学するということ自体がとてつもないことですが、それもあのバークリー音楽大学なのですから、驚きです。古里さんの目標のひとつは、20歳までにグラミー賞を受賞すること。すでに将来に向けての具体的なビジョンを描いているところが、すばらしいと思いました。お話からも聡明さがひしひしと伝わってきて、まだ13歳だということを忘れてしまいます。
古里さんが1曲目に演奏したのは「This Moment」より。これを11歳で書いたといいますから、非凡というほかありません。2曲目は新曲の「the Shared」。日本の音階をベースラインに用いて日本人である自分自身を表現しているのだとか。変化に富んだリズムがおもしろいですよね。自由に羽ばたくような高揚感がありました。20歳までの目標として、グラミー賞受賞に加えて「ジャズスタンダードを作曲する」「クラシックを演奏する人にも愛される曲を作る」といった項目が掲げられていましたが、もしかするともっと早くにそうなるかも、という期待を抱かせます。
トランペットの松井秀太郎さんは、ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」と、サン=サーンスの原曲を松井さんが編曲した「DANSE MACABRE」を演奏してくれました。サン=サーンスの原曲は交響詩「死の舞踏」。骸骨がカチャカチャと音をたてながら踊るというグロテスクなユーモアを含んだ曲です。これが松井さんの手にかかると、自由で楽しくて、洒落っ気のある音楽に変身します。カッコいいですよね。
おしまいは古里さんと松井さんの初共演で、オスカー・ピーターソンの「自由への賛歌」。ポジティブなエネルギーにあふれたフレッシュでのびやかな音楽を堪能しました。
飯尾洋一(音楽ジャーナリスト)