鳥取・江府町
〜奥大山の名水 僕のコーヒー〜
今回の舞台は雄大な大山を臨む、鳥取県日野郡江府町。この町にある、閉校となった小学校からは日々、とってもいい香りが漂って来ます。主人公・遠藤明宏さん(65歳)が理科室で始めたのは…コーヒーの焙煎所!その名も『奥大山の水洗い珈琲合同会社』、名前の通りコーヒーの生豆を奥大山の水でジャブジャブ洗ってから焙煎しています。このコーヒーが「スッキリして美味しい」と地元で大評判。鳥取県を故郷に持つ妻の淑美さん(61歳)の応援もあり、この地で夢を実現しました。
千葉県出身の明宏さんは、淑美さんと結婚後、大阪にある食品加工会社で商品開発や営業の仕事をしていました。51歳の時「自分で商品を開発し、新しい分野でチャレンジしたい!」と早期退職。起業を夢見ていましたが思うようにいかず、アルバイトをしながら悶々とした日々を過ごすことに…。そんな中、明宏さんは趣味でコーヒーの焙煎を楽しむようになり、ある時インターネットで見つけたのが、生豆を洗ってから焙煎する方法でした。半信半疑で試してみると、自分好みのスッキリした味わいのコーヒーになり、感動した明宏さん。大学教授として働く淑美さんの職場の方に飲んでもらうと、「飲みやすい」「クリアな味」と高評価。それ以来、“水洗い”にこだわり、コーヒーの焙煎にのめり込んでいきました。その後、淑美さんから「故郷・倉吉市へ帰りたい」と打ち明けられ、「僕も付いて行く」と即答した明宏さん。「せっかく鳥取で暮らすなら、趣味を形にして奥大山の水を使った、“水洗いコーヒー”で町おこしをしよう!」と新たな夢が生まれました。場所探しをするうちに出会ったのが、江府町にある旧米沢小学校。奥大山の水を源流とする水道に加え、焙煎に必要なガスも備わっていた理科室を借りて、2020年『奥大山の水洗い珈琲合同会社』を立ちあげ、夫婦で大阪から倉吉市に移住しました。
目標は大きく「鳥取から世界に通用するコーヒー豆を!」と語る明宏さん。自然豊かな職場・江府町と住まいのある倉吉市で充実した日々を送っています。妻の淑美さんも「焙煎人」として新たな人生を歩み始めた夫を支えながら、故郷での暮らしを満喫中。今この地でどんどん仲間の輪を広げつつあるお2人、これからの暮らしも思いっきり楽しんで下さい!
奥大山の清らかな水で洗った生豆は、しっかり乾燥させて割れた豆などを取り除く“ハンドピック”作業をしてから焙煎を行います。細かな温度管理、徐々に変化する豆の色や爆ぜ音を確認しながら“中煎り”に焙煎するのが明宏さんのこだわり。焙煎機の前につきっきりで集中することおよそ15分。パチパチと音をたてながら出てくるコーヒー豆は、香ばしくなんともいえない良い香り!その後も大変な作業が続きます。ふるいにかけて大きさの違う豆などを外し、さらに目視で一粒一粒割れや欠けのある豆を取り除いていくんです。こうして綺麗で粒の大きさが揃った豆だけに選別する明宏さん。ここまでするのは「どこに出しても恥ずかしくない、世界に通用するコーヒー豆にしたい!」という熱い思いから。日々そんな熱意を胸に、笑顔で意気揚々と理科室に通っています。
夫婦揃ってお休みの日、出かけたのは住まいのある倉吉市内。まず向かったのは、明治時代から続く老舗の銭湯『大社湯』。実はこちら、淑美さんが育ったご実家なんです。国の登録有形文化財でもある貴重な建造物は、淑美さんの宝物。今もご両親が元気に番台に立ち、母・智子さんは「娘夫婦が帰って来て、そばにいてくれることが心強い」と話してくれました。その後は“山陰の小京都”と称され、江戸・明治期の建物が多く残るご近所の散策です。淑美さんが幼い時から通っていた、たい焼き屋さんを訪ねたり、同じくUターンした方が始めた地ビールのお店を訪れたり。他にも移住してから新たに出会った仲間の輪がどんどん広がっていて、田舎暮らしを目いっぱい満喫している遠藤さんご夫婦です。
明宏さんは仕事が落ち着くと、味見も兼ねて焙煎したコーヒー豆を挽き、アイスコーヒーをいれて一休み。同じ校舎内で働く仲間にもお裾分けします。元保健室で働くのは、鹿や猪の肉を加工している『奥大山地美恵』の宇多川さんです。貴重で高価な鹿肉をお裾分けしてもらい、恐縮しきりの明宏さん。その奥にある元職員室に居たのは、高齢者の農業支援などの活動をする『奥大山農業公社』の加藤さん。実はこの学校の卒業生で、明宏さんが校舎で働く仲間に加わってくれたことを大歓迎。明宏さんのコーヒーの大ファンでもあり「コクが深い」「ぶっちぎりで美味しい」と絶賛していました。また明宏さんの焙煎所によくやって来るのが、江府町の移住相談窓口で働く末次さん。移住前からお世話になり、いつも差し入れを持ってきては何かとサポートをしてくれる恩人です。みなさん、一緒に江府町を盛り上げようと頑張る、心強い仲間です。
大山に降った雨や雪が長い年月をかけてろ過され、湧き出ているという源流の一つが「木谷沢渓流」。大山のふもとにあるこの森の中に入ると、たちまち別世界!ひんやりした空気を感じ、清らかな沢の流れだけが聞こえてきます。最初はこんな所があるとは知らず、来てみて驚いたという明宏さん。ここは「奥大山の水洗いコーヒー」の原点とも言える場所で、定期的に訪れるようにしています。冷たい水に触れ、川霧に包まれながら「下界の汚れが全部とれちゃう感じがする。これが、この渓流のいいところ」と語ります。そんな特別な場所が職場のすぐ近くにあって気分もリフレッシュ、こうして大山の恵みを常に全身で感じているんです。
道の駅 奥大山
明宏さんが丹精をこめて焙煎したコーヒー豆を販売している場所の一つが江府町にある道の駅です。
明宏さんが一人で焙煎作業をしており、数に限りがありますので、売り切れの際はご了承ください。
※焙煎所では販売しておりません。
電話:0859-75-3648
営業時間:午前8時30分〜午後5時30分
奥大山の水洗い珈琲豆
ブナの森 2,160円(180g)
グアテマラ 2,380円(180g)