千葉・館山市
~ 釣り好き父ちゃんの宿カフェ ~

舞台は、温暖な気候で別荘地としても人気がある千葉県館山市。夏は観光客で賑わう波左間海水浴場を臨む場所にある、カフェと素泊まりの宿『INN&CAFE ONE DROP』を営む柳沼宗隆さん(47歳)が主人公です。グリーンを基調にしたポップでお洒落な店内には、釣りが趣味という宗隆さんが集めた無数のルアーや釣り竿などが並びます。カフェの奥が宿。元は純和風の宿泊施設でしたが、見事にスタイリッシュな洋室にリノベーションした宗隆さん。特徴的なのが、希望する宿泊客に無料で、道具の選び方から釣り方までを丁寧に教える「釣りガイド」をしていること。そんな『ONE DROP』、101号室は管理人室。現在は宗隆さんと高校生の長男・大吉さん(16歳)との2人暮らしで、大吉さんは父の背中を追って東京から移住しました。
東京生まれ、千葉県で育った宗隆さん。大学卒業後、在学中に始めた商業施設の内装・ディスプレイを手掛ける会社でアルバイトを続けることに。宗隆さんにはもう一つやりたいことがありました。それは、お金を貯めてはテントを携え自転車で各地をまわる旅。恋人の佳代さんに薦められた、カヌーイスト・野田知佑さんのエッセイを読んだことがきっかけで始めた旅でした。釣りの魅力に目覚めたのも、旅で出会った方との交流があったから。そんな暮らしを続けていた宗隆さんでしたが、長らく待ち続けた佳代さんから「結婚するよ」とプロポーズを受け、29歳の時に結婚。宗隆さんは「やりたい放題やってきた。これからは彼女の言うことに従おう」と決心します。そして佳代さんの一言で長年のアルバイト先に就職。何にでも一生懸命に取り組む宗隆さんは、仕事に没頭するあまり睡眠時間が2~3時間という生活を何年も続けました。「このままでは倒れてしまう…」と宗隆さんの体を心配した佳代さんは、今度は仕事を辞めるように助言。宗隆さんは、それなら好きな釣りを活かせる仕事をしようと考えたんです。館山に宿泊施設の中古物件が見つかり、若手の大工さんと共に、コツコツ建物をリノベーション。そして2014年、釣りのガイド付き宿とカフェ『INN&CAFE ONE DROP』をオープンさせました。
宗隆さんの釣りスタイルはキャッチ&リリース。ルアーは様々な大きさや形状のものがあり、釣れる魚も違います。ガイドでは釣り初心者にも基本から優しく教え、釣り方も丁寧に手ほどきします。時折、離れて暮らす妻・佳代さんと長女の寿々奈さん、次女の葉月さんもやってきて、とっても楽しい週末に。美しい館山での暮らしを満喫する宗隆さんと、長男・大吉さん。仲間たちといい時間を過ごしています!



宗隆さんがたった1人で切り盛りするカフェで出しているのは、太麺でこってり味にこだわるナポリタンや、自家製ルーが絶妙な味わいのカツカレーなど。昭和の香り漂う、懐かしい雰囲気のメニューが中心です。これは、「お父さんたちも気軽に入れるカフェを作りたい!」という宗隆さんの思いがこもっているから。ボリュームもバッチリで、一皿でお腹も心も大満足!中でも常連さんたちに人気なのは裏メニュー…、野菜がたっぷり入った「タンメン」です。最初はまかないで作っていたそうですが、常連さんたちがいつものメニューで飽きないようにと、お店でも出すようになりました。でもこのメニュー、「タンメンあるぜ」とボードに出ている時だけの特別メニュー、あったらラッキーです!



宗隆さんは様々なルアーを使い、陸から魚を釣るいわゆる「陸釣り」専門です。魚の命を無駄にしたくないと、キャッチ&リリースのスタイルが基本。ルアーには水に浮くものや、重みがあって沈むもの、水の抵抗を受けて動きを演出するものなど一つ一つに個性があり、釣れる魚も違います。宗隆さんはその日の風向きや潮の流れなど海の状況を見極め、鳥や小魚の動きなどで海中の魚たちの動向を読み、いくつものルアーを使いこなします。ある晩、カフェの常連客、小西さんと夜釣りに出かけた宗隆さん。狙いはスズキの子「セイゴ」です。最初はなかなか姿を見せませんでしたが、潮の流れを読み、慎重なルアー選びの末、見事沢山のセイゴを釣り上げました。お客さんに釣らせてあげられた時の宗隆さんは、本当に嬉しそうです!



宿のベッドメイキングは親子揃って行います。長男・大吉さんは、小学生の時から宗隆さんの仕事を手伝っているので、息を合わせて手早くシーツを整える手つきは実に見事!そしてやってきたのは鈴木さんご夫婦です。これまで何度も利用して下さっている超常連のお客様。宿泊者には1日1組限定で宗隆さんが釣りガイドをしています。鈴木さんご夫婦は今まで何度か釣りを体験していますが、まだ初心者クラス。宗隆さんは竿やルアー選びからキャスティング方法まで丁寧に教えてくれるので安心です。初心者でも気軽に釣りに行けるのが、『ONE DROP』の魅力。鈴木さんご夫婦は「今テレワークで、こういう所で美味しい空気吸って何も考えないの、だいぶリラックスしますよね!」と釣り時間を満喫していました。



週末、妻・佳代さんと長女の寿々奈さん、次女の葉月さんが東京からやってきました。久々のお父さんとの再会に、お嬢さんたちは満面の笑み。お母さんと顔を合わせた大吉さんはちょっと照れくさそうです。実は子供たち、常連客・鈴木さんご夫婦の指導で、夏から楽器演奏にチャレンジしていました。大吉さんがギター、寿々奈さんがキーボード、葉月さんがエレキを担当。この日、夏からのバンド練習の成果を見せてくれた皆さん。セッションは見事に成功です!
こうしたお客さんと家族との繋がりが出来るのも『ONE DROP』のフレンドリーなおもてなしがあるから。皆さん、まるで家に戻ってきたような温かな雰囲気を感じられると言います。宗隆さん、素晴らしい館山の暮らし、釣りの魅力を多くの人に知ってもらうために、これからも頑張って下さいね!
INN&CAFE ONE DROP

宗隆さんの素泊まり宿と、カフェです。
カフェにはナポリタンなど懐かしいメニューが並び、素泊まりの宿では広々とした洋風のお部屋に泊まることができます。宗隆さんの釣りガイドは宿泊客のみ。1日1組限定なので、予約はお早めに!
カフェ営業時間:午前11時~午後6時
定休日:月曜・火曜
ナポリタン:1,100円
カツカレー:1,100円
宿泊代:1泊 11,000円~
(休日前は13,200円~)

