東京・国分寺市
~ お母さんが守る 洋館カフェ ~

今回の舞台は農地や自然が多く残る、東京都国分寺市。市内の閑静な住宅街に、木立に囲われた一角があります。その中には、近隣住民もこれまでその存在を知らなかった、古い洋館が建っています。主人公・久保愛美さん(53歳)は、荒れ果てた庭の木を伐採し整備、古びた洋館を修繕してこの秋、カフェとして生まれ変わらせました。元々は、お隣に暮らしていた沖本さん姉妹の邸宅で、久保家が受け継ぐことになった建物。愛美さんは姉妹への思いを込め「カフェおきもと」と名付けました。
横浜市出身の愛美さん。23歳で結婚、2人の娘が誕生します。その後、夫の勤務先に近い国分寺市に引っ越し、マイホームを構えました。そして出会ったのが、隣にあった洋館に暮らす、沖本京子さんと智子さん姉妹。何気ない挨拶に始まり次第に交流が深まっていき、食事や旅行に行くなど家族のような関係に。そして沖本姉妹が90歳を超えると、愛美さんは献身的に介護を始めます。そのうち“家を継いでほしい”と懇願されるように。姉・京子さんは医師として、妹・智子さんはピアノ講師として働きながら家を守ってきた…そんな姉妹の思いを知るにつれ、愛実さんは家を受け継ぐ決心をします。しかし家の修繕費用を見積もると…なんと1億円以上という試算が。もう取り壊すしかないと考えていたところ、大工さんや歴史に詳しい人達が愛美さんの元を訪れ、戦前から手を加えずに保存されてきたこの建物がいかに貴重であるかを教えてくれました。そして愛美さんは家の“守り人”となって次の世代に残していこうと決意、維持費を得るため今年10月「カフェおきもと」をオープンしたんです。
カフェ学校にも通い、計画的に始めたお店。恩師と相談し、洋館に合うエキゾチックな洋食ランチ、多様なスイーツやドリンクを用意し、お客さんに洋館での時間を楽しんでもらえるように考えました。しかしオープン時は調理に手間取り、慣れない仕事に四苦八苦する愛美さん。でも仕事を終えて隣の自宅に帰れば、出産で里帰り中の次女と3歳の孫、かわいい双子の赤ちゃんに癒される毎日です。
実は開業前、難病を患ったことで一度は死を覚悟した愛美さん。「人は死ぬが、家は残る。だから自分の代はこの家を守り、次に繋げていけたら素敵。私の最後の仕事」と決心を熱く語ります。そんな素敵な女性、愛美さんと美しき洋館。これからも共に歩み、輝き続けて下さいね!



元々洋館は、昭和7年に神戸の貿易商人が建てた別荘でした。その後、友人だった元海軍少将・沖本至に受け継がれ、その娘たちである京子さん、智子さん姉妹が暮らすことによって大切に守られてきたんです。そのため奇跡的に建築当初の形のままで残ることとなりました。しかし高齢となったお2人に手入れは難しく、庭木は生い茂り家もかなり傷んでいました。そんな洋館を受け継いでカフェとして蘇らせた愛美さん。オープンを4日後に控えたこの日は、近所の方や知人をお招きしてのお披露目会。この洋館に入るのは、初めてという方ばかりでした。そんな中、この建物の価値を認め、保護に尽力してくれた市役所の方も駆けつけてくれました。これまでお世話になった様々な事を思い出し、涙が止まらない愛美さん。「まだこれからですよ!」と、お店を開業する愛美さんにエールの声が飛んでいました。



いよいよオープンを明日に控えた「カフェ おきもと」。友人や関係者をお迎えしてのプレオープンです。愛美さんが通っていたカフェ学校の恩師・宮崎先生も厨房に立って、しばらくの間サポートしてくれます。「煮込みハンバーグ1、オムハヤシ1!」接客担当からメニューを告げる声が響き、お客さんからの初めての注文が…。中でもふわとろに仕上げるオムライスは一発勝負で緊張します。練習ではうまく行っていたのに、破れて穴空き状態に。「もう一回いこう!」と先生からやり直しの指示が。次は…うまくいきました。洋食の王道、オムライスとハヤシライスがドッキングしたオムハヤシ。洋館のイメージにぴったりです!この日お招きしたお客様には特別に、沖本家に残されていた蓄音機の音色や、焼夷弾で焼かれた建物の痕跡などを披露。歴史を感じた皆さんは感嘆の声をあげていました。



この日、洋館には元々この邸宅に暮らしていた、沖本智子さんの姿がありました。御年99歳。高齢となった今は施設で暮らし、こうして時折、家を訪れます。「良かった。皆さんに楽しんでもらいたい」とカフェに生まれ変わることを心から喜んでくれています。実はもともと、知子さんと愛美さんで「お家を喫茶店にしたらいいね」と夢を話していたそうで、それが現実となりました。
かつて沖本一家が暮らしていた時代には、生活の場として洋館から渡り廊下でつながる和館が増築されました。こちらも劣化が激しくボロボロになっていましたが、修理をして障子を張り替え、新しい畳を入れました。愛美さんと長女の七恵さんが介助をしながら智子さんをご案内。「本当に良くなった、こんなに変わるなんて私全然想像がつかない。」と感動しきりでした。


オープン前から何かと力になってくれているインテリアデザイナー・橘田洋子さんがいらっしゃいました。洋館の価値を専門家の立場から愛美さんに教えてくれた恩人です。「建築時に作られた備え付けの家具や、スイッチ1つ、床板1枚に至るまで、当時のものがそのまま残っているのは、まさに奇跡だ!」と橘田さんは言います。
沖本姉妹が便利な金属サッシなどに変えず、大事に使い続けてきたからこそ、こうしてそのまま残っているんです。愛美さんもその意志を受け継ぎこの家を大事に使いながら守っていく決意です。また、ある日、この建物の修繕を行う建築会社の川口さんと大道寺さんが訪れました。こちらの会社では、壊れた部分を復元する仕事を良心的な価格で請け負ってくれたんです。お2人は歴史ある建物を建築した職人さんたちへの尊敬の念を持ち、関わってくれています。愛美さんが相談したのは、朽ちて破損が激しくなっている洋館から和館につながる渡り廊下の修繕について。プロの目で建築当時の姿を想像しながら、修繕はこの先ずっと続いていくそうです。
カフェ おきもと

愛美さんが営む、洋館カフェです。営業は金曜から月曜までの週4日。席数が少ないため混雑が予想されます。お越しの際には、事前のご予約がおススメです。
電話番号:042-572-1234
営業日時:金曜・土曜・日曜・月曜
午前11時~午後5時
【メニュー】
牛肉のオムハヤシライス:1,375円
煮込みハンバーグとおばんざい盛り合わせ:1,540円
※蓄音機の公開や、飲食スペース以外へのお客様の立ち入り、館内のご案内は通常行っていません。ご了承下さい

国分寺市 市政戦略室

都会では貴重な緑あふれる庭園や、地元の新鮮野菜など魅力がたっぷりの国分寺市。情報はこちらからお問い合わせください。
電話番号:042-325-0111
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※平日のみ
