もう一度会いたい 楽園の主人公
東京・荒川区
~ 世界へ翔け!夫婦のミニチュア ~

“もう一度会いたい楽園の主人公”としてかつての放送を再構築、さらにその後どうなったのか、現在の主人公の暮らしぶりを紹介します。
11年前に訪れた舞台は、町工場が多く今も昭和の風情が残る、荒川区西尾久。主人公も金属加工の工場を営んでいて、建物には『ミニ厨房庵』の看板が。室内はドールハウスショップ兼工房で、主人公の河合行雄さん(70歳)が金属製の厨房器具、妻の朝子(ともこ)さん(70歳)が食品などのミニチュアを手掛けます。
アパレル会社のデザイナーをしていた行雄さんは、販売員だった朝子さんと出会い結婚。その後、父親が営んでいた金属プレス工場を継ぐことに。不況の影響で仕事が減少する中、工場を潰したくないと頑張ってきた行雄さん。一方、ミニチュア収集が趣味だった朝子さんは、子供が独立するとドールハウス教室に通い始めます。家業の話をすると先生から「金属でミニチュア鍋を作ったら」とアドバイスが。そこで行雄さんが工場の機械を利用して小さな銅鍋を製作してみると…大好評!2005年、金属の厨房器具ミニチュアを中心に販売する『ミニ厨房庵』をオープンしました。傾きかけていた工場を、朝子さんの趣味が救ったのでした。
美術大学で学んだ経験を持つ長女のあさみさんも『ミニ厨房庵』を手伝い、若手ならではのアイデアで両親を支えます。孫のななみちゃんもミニチュアが大好き。当時ご夫婦は、アメリカのドールハウス展示会への出展を目前に控え、海外進出に胸を膨らませていました。
あれから11年、『ミニ厨房庵』には、変わらず創作活動に打ち込む河合さんご一家の姿がありました。アメリカでの展示会では、大きな評価を得たご夫婦。今や世界中から依頼が舞い込んでいます。作品はどんどん進化し、4センチほどのかわいらしい炊飯器は、持ち手が自由に動き、フタを開けたらお米が入ったお釜を取り出せます。どこまでも本物に近いものを追求し続ける行雄さん。今手掛けている最新作は「蒸気機関の工場」、金属が主体のSFの世界です。ご夫婦は新境地を開拓しながら、さらに夢を追いかけていました。ドールハウスの世界でさらなる向上を目指し続け、皆さんの夢は尽きることがありません。
(※2009年11月7日放送分を再構成したものです)



ある日、朝子さんはさいたま市のドールハウス教室へ。お店を開いてからも、さらに腕を磨こうと通っていました。講師の鎌田さんはドールハウスの世界では知る人ぞ知る達人。酒瓶や焼き物、なんでもミニチュアにしてしまいます。そんな鎌田先生が唯一作れなかったのが金属製品だったそうです。行雄さんが金属加工の仕事をしていると知った先生は「金属製品のミニチュアを作ってみたら」と提案してくれました。小さな銅鍋の出来ばえを大絶賛され、そこから始まった『ミニ厨房庵』。鎌田先生はご夫婦の大恩人です!それ以来、先生はお得意様。鎌田先生の作品にも行雄さん作のおでん鍋など、沢山のパーツが使われています。生徒さんたちも、「本物に近いものを求めていたので…」と大絶賛。ブリキのガーデニング用品や厨房グッズなどのミニチュアの注文が入り、行雄さんはお忙し。嬉しい悲鳴でした。



2010年、シカゴで行われたドールハウス展示会に初出展した河合さんご夫婦。会場では珍しい金属のミニチュアに、たくさんドールハウスファンが集まってきて、「こういう物が欲しかった!」と飛ぶように売れました。これをきっかけにオーストリアのドールハウスの博物館から特注品の依頼が。大きな病院を模したドールハウスの中に飾るベッドや保育器など、金属で出来た医療機器を作って欲しいというのです。メールには「あなたにしかできないから、あなたに頼む」との言葉が。国境を越えた大きな注文にご夫婦はびっくりしたそうです。今年も食品のショーケースや、サラダバーなどを緻密に再現したスーパーマーケットの新作ミニチュアを持ってシカゴに行く予定でしたが、新型コロナの影響で展示会が中止に。また来年、気持ちも新たにチャレンジしましょう!


放送から11年たった現在、『ミニ厨房庵』にはとっても心強い助っ人がいます。中学3年生の、孫・ななみさん。最初に訪れた時はまだ3歳、あどけない表情で樹脂粘土をコネコネする、ミニチュア大好きな幼稚園児でした。ななみさんはあれからずっとミニチュア作りに親しんできたそうです。今では『ミニ厨房庵』の一員として、樹脂粘土やレジンなどの材料を駆使して食品ミニチュアのパーツ作りなどお手伝いしています。この日も、緑色の樹脂粘土を薄ーく伸ばし、棒でくしゃくしゃとかいて何やら作っていました。これは、本物そっくりのちぢれたレタス。実に手慣れた作業で作っています。ミリ単位のエビやラディッシュをトッピングすれば、500円玉より小さなサラダの出来上がり。「楽しいからやっている!」と話す、ななみさん。将来が楽しみですね!



行雄さんは出版社から依頼されたという最新作を作っている最中でした。無数の配線や歯車などの金属部品が一杯、上部からは蒸気が噴出する「工場」を表現したドールハウスです。これは“スチームパンク”というジャンルの作品で、蒸気機関を主な動力として使っている時代を表現した空想の世界。行雄さん、この作品では東京タワーでも使われている金属の接続方法、“リベット”を使った工法にこだわっています。金属と金属の板の間に穴を開け、銅を打ち込んでかしめて接着させる方法で、リベットマニアにはたまらないそうです。ミリ単位のリベットを工場の機械を駆使して緻密に再現していく行雄さん、職人魂がビンビン伝わってきます。「これはいいのが出来た!」と思っても、すかさず朝子さんとあさみさんがチェック!「ここにクレーンをつけたらもっといいんじゃない?」などとアイデアは止まりません。意見を出しながらどんどん改良を加えていきます。『ミニ厨房庵』はこれからも、どんどん進化し続けます!
ミニ厨房庵

河合さんご夫婦が作るミニチュアを見たい方は「ミニ厨房庵」へ。
現在は、予約制でミニチュアを販売しています。
また、工房実店舗へのご来店も必ずご予約をお願いします。
電話番号:03-3893-0996
問い合わせ時間:午前10時~午後4時(平日のみ)
※不定休

