石川・珠洲市
~ 米農家が始めた古民家の宿 ~

今回の舞台は石川県珠洲市。のどかな山間で代々受け継ぐ古民家を使い、農業体験が出来る農家民宿「古民家 奈良木」を始めた奈良木美津子さん(68歳)が主人公です。
珠洲市出身で、四人姉妹の三女に生まれた美津子さんは奈良木家の跡継ぎとなり、隣町に住んでいた船員の延夫さんを婿にとりました。市役所勤めをしながら3人の子供を育てます。1999年、大学生のグループから「かやぶきの屋根に泊まって稲刈り体験がしたい」と市役所に依頼がありました。奈良木家に宿泊した学生たちは、とても感激して帰りました。その事をきっかけに、農業体験や田舎暮らしを通して、色々な人とのふれあいを持ちたいと思うようになりました。そして2009年、美津子さんは定年退職後に自宅をほぼそのまま活用し、農家民宿「古民家 奈良木」を始めました。
宿の目の前にある田んぼで田植えや稲刈りはもちろん、季節ごとに様々な田舎暮らしを体験をすることができます。宿の料理は、美津子さんと夫の延夫さんが作った米、親戚や近所の方々の畑で採れる旬の野菜、そして奥能登の漁師さんから頂く海の幸を使った田舎料理でもてなします。昔から自分たちが食べていた料理が、お客さんに喜ばれています。
農業と民宿を両立しながら、奮闘する美津子さんの暮らしぶりを紹介します。


実りの秋を迎え、田んぼでは稲刈りの準備を進めています。米作りに関しては夫の延夫さんが主役で、美津子さんは補助です。稲刈りを前に、ご夫婦は刈り取った稲を吊るして乾燥させるための「稲架」を作ります。「稲架」で干した米のほうが甘みがあると美津子さんは言います。多くの人に自慢の米を届けたいと、ご夫婦は笑顔で話します。


美津子さんが主役となって頑張っているのは、赤い屋根の自宅で開いた農家民宿「古民家 奈良木」です。先祖代々続く古民家は、歴史を感じさせる重厚な造りで、宿泊は座敷など4つの部屋を自由に使えます。土間も広々として風格があります。古民家は、「書き物はないから証明できないけど、築300年程だそうです」と美津子さんは話します。


「古民家 奈良木」には、決まった体験プログラムがありません。その季節に合った、田舎暮らしを楽しむというコンセプトで、お客様の要望に応えています。夏は、昔ながらの天日干しでの梅干し作り。これは「土用干し」と呼ばれる作業。梅を3日間天日に干しますが、3日目は外に出したまま夜露に当てます。そうする事で柔らかくて美味しい梅干しになるんです。今ではあまり見られなくなった農村の風景です。


続いての農業体験は「リンゴの袋かけ」。美津子さんの従妹 地渡整さんがリンゴ農園をしているので、お手伝いです。袋かけをするのは、石川県で生まれた品種「秋星」です。虫除けや病気の予防に欠かせない袋かけ。宿泊のお客様たちのお手伝いで、あっという間に百個以上の袋かけが終わりました。これからの季節はリンゴの収穫体験も出来ますよ。


能登の各地で行われる「キリコ祭り」は、夏から秋にかけての風物詩です。キリコとは巨大な灯籠のこと。なかでも珠洲市の『宝立七夕キリコ祭り』で使われるキリコは、高さが14メートルもあります。祭りのクライマックスは夜10時、沖の松明を目指してキリコが海へと担ぎ込まれます。花火も上がり、海中を乱舞するキリコは迫力満点、毎年たくさんの人出で賑わいます。
農家民宿 古民家 奈良木

山と田園に囲まれた「古民家 奈良木」。歴史ある建物でくつろぎながら、奥能登の海の幸・山の幸をふんだんに使った田舎料理を楽しめる宿です。お客様は1日一組限定、6名様まで。
電話:0768-82-1441
問い合わせ:午前7時~午前9時
午後6時~午後8時
定休日:不定休
1泊2食付 8,500円(税別)
または、農家民宿「古民家 奈良木」HPからも予約が出来ます。
