今回の舞台は三重県大紀町。海も山もある、温暖な土地です。主人公は、子育てをしながらイチゴ栽培を続けてきた小林靖子さん(56歳)と6年半前に会社を退職し、妻と共にイチゴ農家として頑張る夫・克則さん(61歳)です。
イチゴは今が最盛期。ご夫婦は「章姫(あきひめ)」という甘味が強く皮が柔らかい品種を育て、毎日お客様に届けています。もともとは靖子さんが「少しでも家計の足しになれば」と始めたイチゴ栽培。楽しそうにイチゴ作りをする妻の姿に克則さんは憧れるようになります。そして55歳で会社を退職。「一緒にイチゴ栽培がしたい」と2009年から夫婦二人三脚で頑張っています。
日々笑顔に溢れ、生きがいを感じている小林さんご夫婦。しかしお二人は、自然災害で大変な苦労を経験しました。これまでの努力をすべて失うほどの被害を乗り越え、今があるのです。それはまさに「復活のイチゴ」。再び美味しいイチゴを作り、地域に届けている小林さんご夫婦は、周囲の皆さんを笑顔にしています。
ご夫婦のイチゴハウスでは、棚を設置して苗を高い場所に植える「高設栽培」と、土に直接苗を植える「土耕栽培」を行っています。同じ品種なのにそれぞれ味が違うそうです。「土耕栽培」のイチゴは濃厚な甘さ、「高設栽培」のイチゴはすっきりとした甘さになるそうです。ご夫婦は地域の皆さんの需要に応え、どちらの味も届けたいと、二つの栽培方法を続けているんです。
小林さんご夫婦は美味しいイチゴを育てるために、収穫やパック詰めなどの出荷作業以外にも、小さな実を摘む「摘果」や余分な葉を取り去る「葉かき」などの地道な作業、そして温度管理など日々細かな努力を続けています。
イチゴは、朝晩の寒暖差が甘さを育むと言われています。研究をすることが大好きな克則さん、イチゴ栽培を始めてから毎日ハウスの温度を記録し、気温や天候の動きを分析したりもしています。
2011年、台風による集中豪雨が大紀町を襲いました。川の堤防が決壊し、小林さんのイチゴハウスは、大部分が倒壊しました。現実を目の当たりにしたご夫婦は「もうイチゴ栽培はできない」と愕然としました。しかし、地元の方々が次々と「また小林さんのイチゴが食べたい」「頑張って」と励ましの言葉をかけてくれました。その声に応えたいと、お二人は1年がかりで、ハウスを再建しイチゴ栽培を復活させたんです。
2年後の2014年、豪雪によって再びハウスが潰されてしまい、ご夫婦は2度に渡る被災を経験しました。しかしお二人はこれを乗り越え、イチゴの栽培を再開させたのです。今、ハウスには真っ赤な甘いイチゴがたくさん実り、ご夫婦は忙しくとも充実した毎日を送っています。ご夫婦の努力を知る地元のお客様たちは「また小林さんのイチゴを食べられてよかった」「本当によく頑張った」といつも温かい声をかけてくれます。これがまたご夫婦のやる気につながるのです。