舞台は栃木県小山市。早期退職後、日本茶専門のカフェを開いた小林博さん(64歳)と妻の美智子さん(58歳)が主人公です。
物心ついた頃から、祖母・ハツさんが淹れる日本茶を飲んで育った博さん。東京の大学を卒業すると、猛烈サラリーマンとして忙しい毎日を過ごしました。仕事一筋で生きてきた博さんにとって、幼い頃から親しんできた日本茶を飲んでいる時が、何よりも安らぎを感じる瞬間だったそうです。そしていつしか博さんは、「他の人たちにも美味しい日本茶を味わって欲しい」と思うようになりました。
こうして、55歳で早期退職を決意。2012年2月、日本茶カフェ『ちゃみせ 茶るん』をオープンしました。『日本茶インストラクター』の資格を持つ博さんが淹れる日本茶は、「家で淹れるお茶と違い、甘くて美味しい」とお客様に評判です。それは「美味しくなれ」と真心を込めて、一杯一杯丁寧に淹れるから…。これからも日本茶の良さをたくさんの人たちに伝えていきたい、と願っています。
祖母との思い出深い日本茶で、日本茶の輪を広げる小林博さんと妻の美智子さんを紹介します。
須賀神社の参道沿いにある『ちゃみせ 茶るん』は、大学生から外国人まで、様々な客層に人気の日本茶専門カフェ。普段はパート勤めをしている妻の美智子さんも、休みの日には店の手伝いをしてくれます。『茶るん』では、博さんが自ら全国を訪ね歩いて選りすぐった茶葉を仕入れています。お客様は、煎茶・玉露・抹茶・和紅茶など常時12種類を超える銘柄から自分好みの茶葉を選んでオーダーすることができます。お茶請けの和菓子も、全国から取り寄せたこだわりの一品です。
『日本茶インストラクター』の資格を持つ博さんのお茶の淹れ方には、特徴があります。茶葉の種類によってお湯の温度や蒸らす時間を変えるのはもちろんのこと、最後の一滴を絞り出すために、体を使って何度も激しく急須を振ります。そうすることで、旨みを最後まで絞り出すことができるそうです。そして二煎目は、一煎目より熱めのお湯を使って淹れます。こうして淹れ方を変えることで、一煎目は“旨みや甘み”、二煎目は“苦み”をそれぞれ味わえ、日本茶の奥深さを知ることができるのです。
博さんは日本茶カフェ『茶るん』で、定期的に様々な催しを行なっています。この日は5種類のお茶を飲み比べて、それぞれの産地を当てる『茶歌舞伎(ちゃかぶき)』というゲームを楽しむ催しを開きました。お湯の温度を同じにして、それぞれのお茶の特徴を出にくくするので、当てるのが難しくなっています。博さんは、こうしたイベントを通じて、楽しみながら日本茶の魅力を多くの人に知ってほしいと願っています。
小林さんご夫婦が訪れたのは、栃木県茂木町にある老舗の和菓子屋『源太楼』。博さんはこの店に特別にお願いをして、自ら選んだ茶葉を使ったカステラを作ってもらい、季節限定のお茶請けとして『茶るん』でお客様に出しています。この日は、心待ちにしていたそのカステラが焼き上がりました。お茶の鮮やかな緑色をした、その名も『ちゃすてら』。さっそく試食をして、「お茶の香りがして美味しい」と大満足の小林さんご夫婦。早く皆さんにも味わってほしい、と胸を躍らせる博さんです。