今回は、茨城県つくば市が舞台。市の北端にそびえる筑波山の麓で野菜や果物を育てながら、その加工品を作っている松本清司さん(64歳)と妻のてつ子さん(64歳)が主人公です。
茨城県桜川市出身で、実家の電気設備業を継いだ清司さん。てつ子さんが経理を担当し、家業は順調でした。ところが7年前に、長男が27歳の若さで他界。ショックのあまり一時は何も手につかなかったというお二人でしたが、やがて「いつまでもふさぎ込んでいてはいけない」と思えるようになりました。そしててつ子さんの母が病に倒れたのを機に、つくば市内のてつ子さんの実家に移住。「農業に関わる仕事がしたい」と、野菜や果物を栽培し始め、2012年、自宅の離れを利用して畑の収穫物を加工する「つくば味工房」を立ち上げました。翌2013年には、手作りのピザ焼き窯も完成、毎月2回、予約制のピザ焼き体験を開催しています。
筑波山の麓で、地元の楽しい“場所作り”に張り切る松本ご夫婦を紹介します。
茨城県南部に位置するつくば市。市内には多くの学術・研究機関が集まり、市の北端には日本百名山のひとつ筑波山がそびえます。古くから信仰の対象だった筑波山。この山を御神体と仰ぐのが『筑波山神社』です。江戸城から見て鬼門に位置するため、徳川幕府から特別に崇拝されました。今も、多くの参拝客が訪れています。
そんな歴史ある神社のほど近くで3年前、自宅の離れを利用して野菜や果物を加工する『つくば味工房』を開いたのが、松本さんご夫婦です。果物を使ったジャムやコンポート、季節野菜のお総菜、揚げ餅や落花生のお赤飯など、すべてご夫婦の畑で採れた新鮮な素材を使って作っています。
ご夫婦の畑の一画には、農作業の休憩に使う喫茶スペースがあります。その名も『モンペとクワ』。かつては肥料小屋として使われていたもので、その使い道を考えていた清司さんが、筑波大学の安藤邦廣教授の提案を受け入れ、自分でコツコツと改装して作り上げました。今では近所の方々が気軽に集まれる、小さな憩いの場となっています。
2013年、清司さんは手作りのピザ焼き窯を完成させました。以来、月に2回、予約制でピザ焼き体験教室を開いています。てつ子さんが下ごしらえした生地を伸ばし、畑で採れた季節の野菜を自由にトッピング。それを清司さんが、絶妙の加減で焼き上げてくれます。帰りがけには、畑で野菜の収穫体験も楽しめます。