舞台は、風情ある城下町、島根県松江市。かつて両親が営んでいたおそば屋さんを再開させた古曽志勢津子(こそし・せつこ)さん(66歳)と、その娘・田中真央子さん(33歳)が主人公です。
1968年に勢津子さんのご両親が始めた「古曽志(こそし)そば」は、母・一子(かずこ)さんがそばを打ち、父・恵洪(よしひろ)さんがつゆを作る、出雲地方ならではの「わりごそば」が評判のお店でした。勢津子さんたち、家族みんなで切り盛りしていましたが、一子さんが病気になったことをきっかけに、惜しまれながら閉店。30年の歴史に幕を閉じました。
しかし恵洪さんの死後、「両親が築いたあの店を、もう一度始めたい」と考えるようになった勢津子さん。2年前、娘の真央子さんの協力を得て、「古曽志そば」を16年ぶりに再開させました。
温かい家族に支えられながら、両親の想いを継いだ勢津子さんと真央子さん。これからも古曽志そばの味を大切に守っていって下さい!
蕎麦殻も一緒に挽いた蕎麦粉を使うため、特有の香りと口当たりが楽しめる出雲そば。「わりごそば」は、割子(わりご)という丸い漆塗りの器を使います。そして「釜あげそば」は、そばつゆをそば湯でのばして味付けをする温かい出雲そば。どちらも「古曽志そば」の看板メニューです。
古曽志家の夕食は、真央子さんの長男・一成(いっせい)君と次男・世音(せおん)君も加わり、にぎやかです。「古曽志そば」を再開させた2人を、心から応援している一成くん。「たくさんお客さんが来て、松江のそばと言ったらうちのそば、と言われるようになってほしい」と、思いを語ってくれました。
勢津子さんの夫・敏郎さんは、空調設備の仕事をしながら、妻と娘を陰でしっかりと支えています。仕事が早く終われば、台所で夕食の料理作り。庭では野菜を育て、割子そばの薬味に使う大根も育ててくれています。「古曽志そば」の縁の下の力持ち。優しくて頼りになるお父さんです。
閉店後の「古曽志そば」にやってきたのは、親戚の皆さん。この日は、おかずを持ち寄っての食事会です。みなさん「古曽志そば」には思い入れがあり、お店の再開をとても喜んでいます。食事会のメインはやはり、古曽志家伝統の「わりごそば」。懐かしい味が、思い出とともに皆さんの口の中に蘇りました。