舞台は、人口1200人程の宮崎県西米良村。過疎化が進む小川地区にある、「おがわ作小屋村」の食事処で働く中武タツさん(78歳)が主人公です。
地域の活性化を目的に、2009年10月にオープンした「おがわ作小屋村」。その中にある、茅葺屋根の食事処では、タツさんをはじめとする村のお母さんたちが働いています。タツさんたちが調理するのは、小川地区に伝わる郷土料理や家庭料理で、16種類のおかずがならぶ「四季御膳」が看板メニューです。おいしい料理が評判となり、100人弱が暮らす小川地区に、今では年間2万5千人のお客様がやって来るようになりました。
大好きな仲間たちと、大好きな故郷のために頑張る中武タツさんの生活を紹介します。
おがわ作小屋村の厨房は、朝の7時から準備が始まります。その日の担当チーフがダシをとり、料理の味を決めます。16種類もおかずがあるので、ゆっくりしている時間はありません。テキパキと準備し次々におかずを仕上げます。スタッフのお母さんたちが、子どもの頃から食べ親しんだ故郷の味はどれも絶品ぞろいです。
お昼に大勢のお客様が訪れる食事処は、満席になることも珍しくありません。この日は、バスツアーのお客様35人がご来店。鹿児島からいらっしゃったお客様たちは、みなさん16種類のおかずに満足し、「見たたけでお腹がいっぱいになる」と喜んでいました。
2人の息子が家を出て40年。以来ずっと、夫・仁男さんと2人きりの夕食が続いています。料理上手なタツさんは、煮魚や漬物など仁男さんの好きなおかずを、さっと準備しました。結婚して58年、言葉がなくてもお互いのことが分かりあっている中武さんご夫婦です。
去年、体調を崩して入院した仁男さんの代わりに、2人の息子がゆずの収穫に来てくれました。息子たちはゆずの実を、タツさんは料理に添えるためのゆずの葉を収穫します。西米良村の特産品であるゆずは、冬場の「四季御膳」を支える大切な食材のひとつです。
日も暮れた午後7時。「おがわ作小屋村」では翌月のおかずの内容を決めるチーフ会が開かれていました。昨年のおかずの内容を踏まえて話し合いますが、この日の話題の中心はゆず。話し合いの結果、鹿肉のゆず入り甘酢和えなどを含め16品中7品を入れ替えることが決まりました。