舞台は、新潟県上越市板倉区。埼玉県桶川市から引っ越し、築230年を越える古民家で暮らす青木武孝さん(70歳)と妻の悦子さん(68歳)が主人公です。東京出身の武孝さんは中学を卒業後、家業の建設業を手伝っていました。22歳で悦子さんと結婚、やがて長男が誕生します。29歳の時に会社に就職しましたが、45歳で独立、埼玉県桶川市に土木会社を立ち上げました。
「老後は自然豊かな田舎の古民家でのんびり暮らしたい」と考えていたご夫妻は、3年半前、上越市で風格ある築230年以上という古民家と出会い、すぐに購入を決意。埼玉県から通いながら、少しずつ改装を重ねて暮らし始めました。今年、お二人は上越市で4度目の冬を迎えます。豪雪地帯であるこの地では、冬支度が欠かせません。雪国暮らしに不慣れなお二人を、地元の人たちが温かく支えてくれています。そしてお二人の古民家は、いつしか地域の人たちが集う憩いの場となりました。
昔ながらの雪国暮らしを楽しむ青木さんご夫妻の暮らしを紹介します。
築230年を越える古民家は、柱や梁など骨組みはそのまま残し、お二人の手で改装しました。広い土間には、大工仕事が得意な武孝さんが作った囲炉裏があります。昔ながらの欄間や釘隠しも生かし、趣きのある空間となっています。中でも悦子さんお気に入りの場所が薪ストーブの前。「炎を見ていると癒される」と笑顔を浮かべます。
悦子さんはこの春から、近所の方に畑を借りて、野菜作りを始めました。「掘り起こしてみないとどんな風に育っているか分からない」と語る悦子さん。自分で育てた大根を使って、沢庵作りに挑戦しました。収穫した大根は、小さいものや形が曲がっているものばかりでしたが、すべて悦子さんが愛情こめて育てた野菜たち。冬の大事な栄養源です。
お二人は、お隣の武藤清さんにしめ縄作りを習いました。屋根裏で干しておいた藁を使って武藤さんが作るのは、代々受け継がれてきた“大黒締め”という種類のしめ縄です。「一家壮健で円満に暮らしてもらいたい」と新年への願いを込めながら、器用に編んでいく様子に、お二人は感動。日本の冬の伝統が雪国に息づいています。
青木さんご夫婦と同じく埼玉県から移住してきた北折さんの自宅で、“かんじき”作りの講習会が開かれました。教えてくれたのは、地元出身の三浦栄一さんです。お二人の他にも、この地に移住してきた仲間たちが参加しました。今年の冬、沢山の“かんじき”の足跡がこの里で見られることでしょう。