舞台は熊本県球磨郡球磨村。「田舎の体験交流館 さんがうら」の施設長、冨永敏夫さん(59歳)が主人公です。「さんがうら」は4年前に閉校した小学校を再利用し、農業体験やグリーンツーリズムの拠点としてオープンした施設です。
球磨村出身の敏夫さんは18歳で上京。大学卒業後は営業職に就き、結婚して2人の子どもが生まれました。しかし、40代半ばになると、離婚や職場の異動などでストレスがたまりがちになりました。そんな時に思い出したのは、故郷の球磨村。子どもが成人していたこともあり、敏夫さんは早期退職を決意。50歳で球磨村に単身Uターンしました。故郷の自然や村の人々に向き合い、敏夫さんの心は次第に癒やされました。しばらくして、体験交流館の施設長を募集していることを知り、“田舎の治癒力を都会の人に発信したい”と応募。そんな熱意を持った敏夫さんが就任し、2011年に「田舎の体験交流館 さんがうら」は始動しました。
Uターンした故郷のために奮闘する冨永敏夫さんの明るく楽しい田舎暮らしを紹介します。
球磨村の三ヶ浦地区にある松谷棚田は日本の棚田百選に選ばれています。その棚田を見守るように立つのは、4年前、135年の歴史に幕を降ろした村立一勝地第二小学校。村の人たちはその元校舎を再生して多くの人を招こうと運営委員会を発足し、「田舎の体験交流館 さんがうら」をスタートさせました。
宿泊するのは、畳を敷いた教室です。食堂は元職員室です。かつての家庭科室と理科室は、排水設備を利用して男女別の大浴場に改装しました。そして、自由に料理をできるように調理実習室も設けられています。小学校の面影が残る、懐かしい館内です。
「さんがうら」は家族連れや小・中・高校生の合宿所として利用されることが多いです。敏夫さんをはじめ4人のスタッフがサポートし、田舎体験が楽しめます。山歩き、ドラム缶風呂、キャンプファイア、川遊びや農林体験など様々なメニューを用意しています。
もっと幅広い層の人たちに利用してもらいたい―そんな思いから、敏夫さんたちは球磨村の水で育まれたヤマメを使って、様々な料理にチャレンジしました。食事を楽しみにする大人の利用客にも喜んでもらえる新メニューです。