今回は滋賀県近江八幡市が舞台です。高校の校長から転身し、水郷の手漕ぎ舟の船頭になった田頭政泰さん(67歳)と妻のみつ子さん(65歳)が主人公です。
高校の体育教師だった政泰さんは、50代になると校長を務めました。定年後を考え始めた58歳の時、PTAの社会見学で近江八幡の水郷巡りを体験しました。手漕ぎ舟の上から見るヨシ原と田園風景に感動し、定年退職後は水郷巡りの船頭になることを決意。半年間の訓練を経て、2007年9月に手漕ぎ舟の船頭になりました。
近江八幡の新緑の風景とともに、田頭さん夫婦の暮らしを紹介します。
政泰さんの自宅は大阪市にあり、みつ子さんと暮らしています。2人の息子は、すでに独立しています。長男夫婦は近所で暮らしているため、3人の孫たちが遊びに来ることがあります。政泰さんが船頭デビューして間もないころ、みつ子さんや孫たちを舟に乗せ、水郷を案内したことがありました。孫たちから政泰さんにお願いがありました。「またおじいちゃんの舟に乗りたい」
政泰さんの教え子3人が水郷巡りを楽しみにやって来ました。いつも以上に気合いが入ります。得意の親父ギャグを交えながら、水郷の植物や動物を紹介します。教え子たちの感想は「手漕ぎ船頭という選択は、田頭先生らしくて格好いい!」。30年前の思い出話に花が咲き、にぎやかな水郷巡りになりました。
政泰さんが勤める近江八幡和船観光共同組合には、船頭が26人います。月に1度会合を開き親睦を深めています。ほとんどの船頭は地元出身で、幼いころから水郷に親しんでいます。船頭歴20年の橋本将一さんは、「船頭の仕事は健康の源だ」と語ります。皆さん、舟に乗ることを楽しんでいます。
船頭の仕事が休みの日、田頭さん夫婦は琵琶湖の北部に浮かぶ竹生島に向かいました。18年前から始めた西国三十三所巡礼です。竹生島には三十番札所の宝厳寺があります。田頭さん夫婦は家内安全と船頭の腕が上がるように祈願しました。