新潟県阿賀野市にある五頭温泉郷が舞台です。ここの出湯温泉で温泉水を使ったパンの店を始めた渡邉暁子さん(64歳)が主人公です。
夫・勉さんの勤務地異動に伴い新潟に引っ越した暁子さん。ある日、知人から趣味だったバドミントンの指導を頼まれました。快諾した暁子さんは、指導のため出湯温泉を訪ね、懐かしい風景に感動しました。一方、年々客足が遠のいている温泉場の窮状を知りました。何か自分に出来ることはないか―思いついたのがパン作りでの地域おこしでした。こうして2013年5月「出湯温泉パン工房」をオープンしました。
天然酵母と温泉水を使ったふっくらもちもちのパンを焼き、五頭温泉郷に多くの客が訪れてほしいと励む、渡邉暁子さんの元気な暮らしを紹介します。
「出湯温泉パン工房」のパンは、温泉水を使うことでふっくらモチモチに焼き上がります。あんぱん、メロンパン、クリームパンなど定番のパンも温泉水を使って作ります。また1日に7本だけ作る食パン「五頭ブレッド」や5つの味が楽しめる「五頭あんぱん」は地元の象徴でもある五頭山をイメージしたパンで、温泉場活性化の願いを込めています。土産に買っていく方も多くいます。
午前5時30分、暁子さんは新潟市から40分かけて出勤します。従業員の内山奈津美さんと2人でパンを焼きます。店内には焼きたてパンの香ばしい匂いが立ち込めます。昼時になると多くの人が訪れ、売れ行きも好調です。店の隣にある足湯では、パンが焼きあがるのを待つ人もいます。オープンして1年、「出湯温泉パン工房」のファンが増えています。
勉さんの定年退職祝いを内緒で開きました。息子の慶樹さんとその妻の真理さんは、花束と家族の思い出が詰まった写真をプレゼント。暁子さんはこれまでの感謝の気持ちを手紙につづりました。思いもよらない気遣いに勉さんの目には光るものが…。いつの日か、「出湯温泉パン工房」では、そろいのエプロンを身に着け、暁子さんを手伝う勉さんの姿があるかもしれません。
温泉旅館の宿泊客に何か出来ないか―暁子さんは、塩漬けにした瓢湖の桜を白あんに練り込んだ“春のおもてなしパン”を作りました。旅館の女将たちに試食してもらうと、「高級和菓子を食べているみたいでおいしい」と大好評です。旅館限定で味わうことの出来る特別なパンです。店では焼きたてパン、旅館では限定パンを味わい、ゆったりと温泉で癒やされる。そんなぜいたくなひとときを五頭温泉郷で過ごしてみてはいかがですか?