今回の舞台は静岡県河津町。伊豆の豊かな自然、そして早咲きの河津桜で有名な魅力いっぱいの町です。この河津町に、神奈川県藤沢市から移住した田中修さん(63歳)と、勢津子さん(58歳)夫婦が主人公です。
消防署に勤めていた修さんは、チャボや烏骨鶏など鶏を飼うのが趣味でした。50歳ごろから土地の広い場所で鶏を飼って暮らしたいと考えるようになりました。勢津子さんと一緒に土地を探し、一目で気に入ったのが河津町でした。二人のモット―は、お金をかけないで楽しく生活することです。野菜も卵も自給自足。節約しながら心豊かに過ごすヒントがいっぱい詰まった田舎暮らしです。
修さんは鶏が大好きです。念願がかない、河津町の広い土地で鶏を飼っています。烏骨鶏にチャボやシャモ、合わせて13羽の鶏は大切な“家族”です。「うーこぴょん」に「うーちゃん」「あごちゃん」…修さんは、それぞれの鶏に名前を付けています。鶏と触れ合う修さんはとても幸せそうです。
広い場所で鶏を飼うこと以外に、もう一つ田舎暮らしでやりたかったこと―それが、手作りのピザ窯がある庭に近所の方々を招き、交流を深めることです。この日はピザパーティーが始まりました。勢津子さんが手作りするピザには、自家製野菜や烏骨鶏のゆで卵などをトッピングしてあります。お金をかけずに、仲間たちと楽しい時間を過ごしています。
田中家の近所でドッグペンション「浬世人(リセット)」を営んでいるのは須田さん夫婦です。二人に頼まれて、修さんと勢津子さんは「浬世人」でアルバイトをしています。勢津子さんは館内の掃除、修さんは大工仕事。節約生活をする中、ちょっとした収入になっています。作業が終わり、4人でゆっくりお茶を味わうのが楽しい時間です。
田中さん夫婦が暮らす河津町沢田地区には、地域の人たちが江戸時代から守り続けてきた場所があります。珍しい一木造りの「涅槃像」がまつられた「沢田涅槃堂」です。年に一度、女性たちが料理を作り、男性たちが力仕事をし、大切な行事が行われます。中でも圧巻なのは、長さ6メートルもある数珠を回して念仏をとなえる「百万遍念仏」です。田中さん夫婦も、伝統を受け継ぐ地域の一員になりました。