今回の舞台は佐賀県三養基郡みやき町です。5年前から仲間と一緒に「和ろうそく」を作る石橋龍吾さん(74歳)と、夫を見守る妻の壽子さん(65歳)が主人公です。
「和ろうそく」は木の実を搾った木蝋(もくろう)から作られます。龍吾さんの実家では父親が木蝋工場を経営していましたが、石油を原料とする「洋ろうそく」が主流になり、工場を閉鎖してしまいました。龍吾さんは県の職員として働き、2000年に定年退職。その後、家の片づけをしていると、かつて木蝋工場で使われていた機材が残っていることに気付きました。龍吾さんは地域活動をする仲間たちに声をかけ、「和ろうそく」作りにチャレンジすることにしました。
かつて、みやき町で作られていた木蝋を復活させた龍吾さんと仲間たち。それを支える妻、壽子さん。町の歴史を守り伝えていこうと奮闘する皆さんの姿を紹介します。
仲間たちと始めた「和ろうそく」作り。龍吾さんは、古い文献をひも解き、幼いころの記憶を頼りに試行錯誤を続けてきました。「和ろうそく」を通してみやき町の歴史を大切に守っていきたい。「和ろうそく」作りに奮闘する姿から、そんな思いが伝わってきます。
龍吾さんが「和ろうそく」作りに情熱を燃やす一方、妻の壽子さんにも楽しみがあります。壽子さんが通っているのは水墨画教室です。描いているのは和ろうそくの原料となる「ハゼの木」です。夫婦それぞれ素敵な時間を過ごしています。
龍吾さんは木蝋工場の跡から出てきた書類を調べています。古い書類を読むために、古文書の勉強も始めました。古文書を学び始めたことで、町の歴史もより深く知ることができたそうです。「和ろうそく」作りをきっかけに、龍吾さんは次々と新たな楽しみを見つけています。
“人に伝える”それこそ、龍吾さんたちが「和ろうそく」を復活させた目的です。この日、「中原の豊かな自然を守る会」の皆さんは、小学校で「和ろうそく」作りの体験授業を行いました。“歴史を伝えたい”と頑張ってきた皆さんの表情は、自然と笑顔になります。児童たちも自分たちで作った「和ろうそく」に大満足です。