舞台は宮城県気仙沼市。「被災した地元を明るくしたい」と地域の交流の場となる、たこ焼きの店を始めた松下初男さん(67歳)と妻の裕子さん(53歳)が主人公です。
定年退職後には空き店舗でたこ焼き店の出店を考えていた初男さんでしたが、開店予定の5カ月前に東日本大震災が発生。店舗は津波の被害で取り壊され、出店計画は全て白紙となりました。
その後、震災に遭い不安になっている人たちを少しでも元気づけようと、自宅でたこ焼きパーティーを開きました。そのとき、人々を笑顔にする“たこ焼きの魅力”を改めて感じ、再びたこ焼き店出店への夢を膨らませます。
そして2013年1月、軽トラックとレジャーテントを組み合わせ、たこ焼き店「なにわのたこよし」をオープンしました。
気仙沼で“心の復興”を目指す松下さん夫婦の笑顔あふれる日常をご紹介します。
気仙沼の人たちを元気にしようと、奮闘する松下さん夫婦。朝9時、開店の準備が始まりました。常に一緒の二人。絶えず会話が飛び交い、楽しそうです。
「なにわのたこよし」の自慢は、外がふわっとしていて中はトロトロ“ふわトロ”のたこ焼きです。その他にも、中にはホタテを入れて、チーズをたっぷりのせた“えびす焼き”も人気メニューの一つです!
たこ焼きで人をハッピーにしたいーそんな思いで、二人は毎日鉄板の前に立ちます。
軽トラックの裏は、テントを張ったフリースペースになっています。たこ焼きを頬張りながら、語らうひととき。地元の方や、ボランティアの学生たちが、このスペースで打ち解け仲良くなります。
この日は、常連客が「たこよし」のテーマソングを作ってきてくれました。コンピューターで作ったこの曲はフルコーラスで約20分。それがずっと繰り返され、終わりはありません。「たこよし」にはにぎやかな歌声が響き渡りました。
「復興屋台村 気仙沼横丁」にある鮮魚店「魚福」を訪ねました。新しいメニューを作ろうと鮮度抜群のミズダコを仕入れました。自宅へ戻ると、早速たこ焼きを作ってみます。地元産のタコを使って作るのは、しょう油ダレを塗りながら焼く「しょうゆ焼き」です。外側がカリッとした“カリふわ”のたこ焼きを目指します。火加減が難しく苦労しましたが、試作品はうまくいったようです。翌日、近所の皆さんを招いて、たこ焼きパーティーを開きました。「しょう油焼き」は大好評です。
今回もたこ焼きがみんなを笑顔にしました。
この日、「たこよし」は軽トラックごと移動して、仙台市にやってきました。街に活気を取り戻そうと、震災後に始まった復興物産市で出張店舗を開きます。“助っ人”に来てくれたのは、「たこよし」開店の時にも手伝ってくれた宮本さんと常連の中澤さんです。若い二人が加わって、いつも以上ににぎやかな店内です。ふわトロで美味しいと、仙台でも「たこよし」のたこ焼きは大人気でした。なんぼしんどくてもワイワイにこにこーそれが初男さんのモットーです。たこ焼きを囲んで、にぎやかに笑ってもらうことで、“心の復興”につながればと、日々頑張る松下さん夫婦です。