舞台は愛知県刈谷市です。自宅の車庫を改装し、自転車の修理工房を始めた高橋忠夫さん(64歳)と妻の礼子さん(63歳)が主人公です。
忠夫さんが自転車の魅力を知ったのは高校1年のとき、父親に買ってもらったサイクリング車がきっかけでした。大学時代には自転車で北海道を一周。その後、レースに参加するほど自転車を愛していました。そして隣町の市役所に勤めていたころから、いつか自転車修理店を始めたいと思うようになりました。定年退職を迎えた2010年、念願の「高橋自転車商会」をオープンしました。昭和の香り漂う“町の自転車屋さん”を営む高橋さん夫婦を紹介します。
工房内には自転車の部品や修理道具が数多くつり下げられています。忠夫さんは1日の半分以上を工房で過ごしています。しかし自転車修理の依頼は頻繁にあるわけではありません。そこで古い自転車の部品を再利用して、オリジナルのハンガーを作ります。忠夫さんの願いは「お客さんが1日に1人くらい来てくれればいい」と謙虚です。
自宅にある石臼をオート三輪に積み込み、近所の集会所に向かいました。
これから行われるのは、定年退職後、町内会の組長を2年間務めたときに始めた師走の恒例行事、餅つき大会です。「勤めていたときは地域の方との交流が少なかったが、自転車店を始めて付き合いが増えた」と笑顔で語る忠夫さんです。
自転車同様に忠夫さんは旧車のオート三輪を愛しています。この日は9年間かけて修理、復元してきた昭和43年式オート三輪の車検を受けます。まるで我が子の受験の合格発表を待つような心境です。結果は…ウインカーの点滅が速すぎたため、不合格でした。それでも忠夫さんの表情は晴々。次回、合格への手応えを感じたようです。
年に1度、忠夫さんは礼子さんと一緒に旅行をします。今年は東京に決めました。以前、忠夫さんは東京を訪れてサイクリングを楽しんだことがありました。今回は礼子さんに「隅田川の冬の風景を楽しんでもらいたい」と自転車で巡る東京・下町の旅を計画しました。
出会ったきっかけは自転車でした。新婚旅行も自転車で…。結婚して37年、高橋さん夫婦の人生は自転車無しには語れません。