舞台は徳島県美波町にある漁村、伊座利地区です。海女漁を続けながらカフェの代表を務めている磯田由利子さん(66歳)と、夫の友春さん(72歳)が主人公です。伊座利で生まれ育った由利子さんは中学校を卒業後、大阪の理容学校へ進みました。そして21歳の時、友春さんとの結婚を機に故郷へ戻りました。そのころから伊座利は過疎が進み、人口は減少していました。伊座利にもっと人を呼ぼう―と、地域の人たちが立ち上がり、海の自然体験イベントなどを企画。地域おこしの拠点としてカフェを開くことになりました。そして2007年10月、由利子さんをはじめ伊座利に住む7人の女性が働く漁村カフェ「イザリCafe」がオープンしました。
今では県の内外から人が訪れ、伊座利に活気が戻っています。
故郷を元気にしようと頑張る、磯田由利子さんと伊座利の人々の、素敵な暮らしを紹介します。
「イザリCafe」―その店名の由来は、食事だけではなく景色を楽しんだり、交流の場にしたりしてほしいという思いから“食堂”ではなく“カフェ”と名付けました。酒蒸ししたあわびが丸ごと入った「あわびカレー」や「あわびのバター焼き」など、海女漁が行われている期間は、新鮮なあわびを使った料理がお客様のもとへ運ばれます。
伊座利では機会があるごとに人が集まります。この日も漁に関わる人たちが集まり一緒に食事をしました。皆が家族のように暮らす、伊座利には移住者も増えました。大阪から移住して漁師となり、3人の子どもが生まれた家族もいます。新たに来た人たちに“伊座利の良さを継いでいって欲しい”と由利子さんは考えています。そんな由利子さんの思いは、伊座利を愛する皆の思いでもあります。
由利子さんと友春さんが海女漁に出ます。夫婦はいつも二人で、船に乗ってきました。生まれ育った伊座利の海。漁のポイントは熟知しています。水中に潜り、ノミと呼ばれる道具を使ってあわびを岩からはがします。どちらがあわびを多くとったのか―夫婦で海に潜って44年。漁に出るとき、二人は常にライバルです。
海女漁のことを知ってもらおうと、去年から「海女さん体験塾」を始めました。今回は由利子さんが講師となり、女性2人が参加しました。磯田さん夫婦の次男、真さんもインストラクターを務めます。「海女さん体験塾」の後には、子どもたちも加わり、「あわび料理体験」も行われました。伊座利の自然を学び、伊座利の自然をおいしくいただく。充実した1日になりました。