今回の舞台は、佐賀市富士町の古湯温泉。この古湯温泉にある旅館「山水」に切子を展示している西野岩人さん(64歳)と妻の美紀子さん(62歳)が主人公です。40代半ばごろから生涯続けられる趣味を持ちたいと思うようになった岩人さん。独創性より、緻密さが求められる切子に心を奪われ、切子に没頭します。美紀子さんは実家の旅館のリフォームに伴い、館内にカフェをオープン。そこで岩人さんの作品の展示を始めました。岩人さんは2011年に定年退職。翌年の暮れには初の個展を開きました。そして岩人さんは、この古湯温泉に切子工房を建てるという新たな一歩を踏み出そうとしています。
江戸末期より伝わる切子に魅せられた岩人さんと歴史ある温泉地でカフェを開いた美紀子さん。古湯温泉を拠点に夢が広がっている西野さんご夫婦のキラキラと輝く日々を紹介します。
江戸時代より受け継がれたいくつかの代表的な模様をガラスに刻みこむ「切子」。岩人さんは、複雑な線を、より多く、正確に刻むことを信条に切子に取り組んでいます。切子の模様の中でも特に難しいとされる「菊繋ぎ」を極めたいと考えている岩人さん。切子への情熱は日々増すばかりです。
美紀子さんの実家である古湯温泉の旅館「山水」。母、和子さんと姉の弓子さん、そして美紀子さんの3人で切り盛りしています。3年前のリニューアルオープンのとき、皆がゆっくりできる場所を作ろうと、旅館の一階に「和かふぇ」をオープン。美紀子さんと弓子さんの大好きな和風の品々が並ぶギャラリーになっています。観光のお客さまだけでなく、美紀子さんたちの趣味の仲間も集う、素敵な交流の場になりました。
岩人さんが訪ねたのはお隣にある旅館「千曲荘」の岸川さん。岩人さんの田舎暮らしの先生です。お二人は古湯温泉おかみ会の朝市に出すタケノコの収穫に向かいました。日中、忙しい女将さんたちのサポートをしています。朝市当日にはタケノコ以外にも地元で取れた新鮮野菜や特産品が並びます。店頭を預かるのは古湯温泉おかみ会の皆さん。活気が溢れる朝市は大盛況、女将さんたちの笑顔が輝いています。
技を磨き、より美しい輝きをガラスに与えたいと思っている岩人さん。この古湯温泉で切子工房を開こうと考えています。工房の名前は「孤遊庵」。岩人さんは古湯温泉の老舗旅館「大和屋」の長男で、名門の佐賀北高校書道部に籍を置く山口雄生さんに看板の文字をお願いしました。雄生さんが書き上げた文字に感動する岩人さん。工房に「孤遊庵」の看板が掲げられる日が楽しみです。