今回の舞台は、熊本県上天草市、天草諸島にある大矢野島です。自然豊かなこの島でパンと木工の店をオープンした藤島茂コさん(59歳)と妻の寿美子さん(56歳)が主人公です。山に登り、木々と触れ合うことが大好きだった茂コさん。50歳の時に、木製の机を作ったことがきっかけで木工にひかれていきます。55歳で勤めていた役場を退職すると、寿美子さんと一緒に、2009年9月、「天然房もっぱん」をオープンしました。木工が大好きな茂コさんとパン作りが大好きな寿美子さんの思いが一つになった店です。「天然房もっぱん」には、地元の人々や移住してきた方々が集まり、天草を愛する人たちの輪が広がっています。
大自然の中で「からだと心においしいパン」と「心とからだに優しい木工」を目指すご夫婦の心豊かな日々を紹介します。
パン作りのリーダーは寿美子さん。「天然房もっぱん」のパンは二人が選んだ自然な素材を使い、砂糖をなるべく使わずに焼き上げる「からだと心においしいパン」です。コーンと天草産のちりめんじゃこをのせた「ジャコーン」など、パンのアイデアを出すのは茂コさんです。夫婦二人の力が一つになって美味しいパンが作られています。
茂コさんは積極的に移住者の力になりたいと考えています。時には、半ば強引に友達になってしまうこともあります。シーカヤックのインストラクターをしている船原英照さんもその一人です。茂コさんは休日を利用し、船原さんの指導でシーカヤックにチャレンジしました。日常の生活では見られない海からの景色を楽しみ、初めてのシーカヤックを満喫することができました。
藤島さん夫婦は地元の特産『パール柑』で新しいパンを作ろうと考えています。『パール柑』は果肉が柔らかく、上品な香りとさわやかな酸味が特徴です。茂コさんのアイデアでデニッシュにすることにしました。試食するとピールや実の扱い方など、新しい発見は尽きません。パール柑を使ったデニッシュの完成が楽しみです。
茂コさんが作るのは「心とからだにやさしい木工」。木の表面を塗装せず、自然な風合いを大事にしています。釘や接着剤も使いません。この日は、お客さんから注文を受けていた、パン用のカッティングボードが完成しました。丹念に磨きをかけ、蜜ろうを塗った表面は、見る角度によって色が変わる自信作です。注文をした桑原さん親子にも笑顔がこぼれています。丹精込めて仕上げたカッティングボード、喜んでもらえました。