舞台は「ものづくりのまち」として知られる大阪府東大阪市。町工場が立ち並ぶこの地に、大東守さん(60歳)と妻のさえ子さん(58歳)が始めた工房があります。守さんが作るのは、名付けて「Kirittai(キリッタイ)」!どんなものかというと…紙を切り、折って作り出す立体的なペーパークラフトです。今にも動き出しそうな昆虫、迫力ある恐竜などを、守さんが一枚の紙から作り出す技は、思わず見とれてしまいます。
地元出身で、子どもの頃からものづくりが大好きだった守さん。親戚の子どもにお面作りを頼まれたことから、紙を切って作る立体的な作品作りに熱中し始めます。55歳で水道局を早期退職後、趣味を仕事にしたいと2008年に自宅で工房をオープンさせました。そして、この立体的な切り紙を「Kirittai」と呼ぶことにしました。
しかし住宅街にある自宅の工房には、めったにお客さんが来ません。そこで守さんは、あちこちで作品作りの実演をしてPR活動に励みます。そんな大東さんご夫婦の夢は「Kirittai」を世界に広めること。壮大な夢に向かって頑張っています。
守さんの作品作り。下書きは一切なく、リズミカルに紙を切っていきます。ハサミは刃物の本場、堺市で作られた特別なものです。切れ味抜群のハサミです。その後は折りの作業、山折り谷折りを駆使して紙を立体的に仕立てていきます。特にすごいのは、必ず一枚の紙で作り、パーツを張り付けたりしていないことです。「切り絵」と言われるのが、一番嫌いと言う守さん。「切りたい気持ち」と「切って立体にするという気持ち」を込めて、「Kirittai」と呼ぶことにしました。
金属加工の工場を営む蜷川さんは、守さんのものづくりの仲間です。守さんの作品作りをいつも応援してくれています。そんな蜷川さんが、かつて発明した面白い物を見せてくれました。「ジェットビンゴ」と名付けた機械は、数字が付いたピンポン玉が勢いよく飛び出し、楽しくビンゴゲームが出来るという代物です。豊かな発想を持つ仲間に刺激を受け、守さんも「負けていられない」と思うそうです。
百貨店での展示販売会に出展することになった大東さんご夫婦。工房にあった自信作を持ち込みました。目玉は、「Kirittai」のリクエスト切りです!早速お客さんから飼っている猫の「Kirittai」を作ってほしいとリクエストされました。手早く完成させると、動きがあって可愛いと気に入ってもらえました。この日は十二支が額に入った作品、全種類12個も売れました。これには守さんもさえ子さんも大興奮です!
立体切り紙の作り方を教えて欲しいという声に応えて、最近は「Kirittai」教室も開いています。下書き無しで切るのはとても難しいため、あらかじめ守さんが紙を切り抜いて作った「キット」を使います。守さんが切った“ぬけがら"を型紙にして、線を引いて切ってもらいます。あとは守さんが丁寧に折り方を指導。この日参加した子どもたちが作ったのは、脚を引っ張るとパタパタ羽ばたく白鳥です。自分の手で作り出した立体切り紙に満足していました。