今回は奈良県山辺郡山添村が舞台です。城のような石垣が築かれ、趣のある住宅が立ち並ぶ広代地区。ここで2008年7月『農家民泊 里舎(みちのりのやど)』を始めた大久保守さん(62歳)と妻の和美さん(54歳)が主人公です。宿泊の規制が緩和されたことで守さんは民泊を始めようと思い立ちました。民泊とは一般の家にそのまま宿泊するホームステイのような宿のことです。守さんは家族に相談せず、改装中だった納屋に囲炉裏を作り、五右衛門風呂やピザ窯も作りました。こうして1日1組限定の民泊が誕生しました。始めた当初は“全て自分がやる”と守さんは宣言していましたが、今では和美さんも民泊を手伝っています。山添村に少しでも多くの人が訪れ、村の良さを知ってもらいたいと願う守さんと妻の和美さんの楽しい生活ぶりを紹介します。
築150年の自宅を開放し、始めた『農家民泊 里舎』。客室は8畳と6畳の2部屋で古民家ゆえの歴史を感じることができます。離れには囲炉裏や五右衛門風呂があります。「若い人たちにも来てほしい」と思い、ピザ窯も作りました。自然豊かな広代地区。ゆったりとした時間が流れています。
この日は大阪から来た女性客2人が宿泊です。まずはピザ作りから始まりました。新鮮な野菜をふんだんに使ったピザは野菜の甘みが引き立ちます。さらに餅つき、野菜の収穫と里舎では次から次へと田舎暮らしを体験出来ます。
宿から坂道を下って行くとあるのが一軒の酒屋。守さんが厳選した焼酎や日本酒を扱っています。山間にあるため1日に2、3人しかお客さんが来ないこともあるそうです。普段は妻の和美さんが店番をしていますが、宿泊客が来る日は夕食作りを手伝うなど、守さんをサポートしています。
広代地区にある菅原神社で毎月1日に行われる“1日参り”。参加できるのは数えで60歳を超える男性のみです。村の安全や五穀豊穣を願って古くから引き継がれている村の行事です。こうした伝統ある風習を後世にもしっかりと伝えていきたいと守さんは考えています。