今回の舞台は、雪深き長野県小谷村。
定年退職後、築120年以上の古民家に移住し、息子と共に『古民家ゲストハウス梢乃雪』を始めた辰巳明さん(64歳)が主人公です。
息子の和生さんが小学4年生から3年間山村留学した小谷村にOBたちが集える場所を作りたいという思いから生まれた『梢乃雪』。故郷にある実家のような温かさが評判となり、多くの人が訪ねて来るようになりました。
そんな、第二の故郷で、息子と共に恩返しをするお父さんを紹介します。
『ここは宿ではなく家、お客様は存在しない』がモットーの梢乃雪。和生さんと宿のスタッフである山口さんから宿泊客にルールとお願いが伝えられます。『特別なサービスは一切なし。でも特別な体験はたくさんあり』の梢乃雪。明さん指導の元、囲炉裏の火入れや夕食作りを体験しました。明さんの一番の楽しみは、日本全国から訪れる宿泊客と酒をくみ交わす夕食の時間。囲炉裏を囲めばみんな家族です。まるで故郷の生まれ育った家に帰って来たような温かな風景。それが梢乃雪です。
明さんが小谷村への移住を決意したきっかけ、それは山村留学時代に言われた「年金生活をするようになったら来い!!」そんな村の方の言葉でした。当時、明さんを小谷村に再三誘っていたのが梢乃雪の隣に暮らす山岸健治さん。明さんは、雪が降るこの季節、今年90歳になる山岸さんに代わって屋根の雪下ろしをするのが日課となっています。明さんにとって小谷村の父親のような存在の山岸さん。村ではまだ若手と言われる明さんは、少しでも恩返ししたいと雪と格闘する毎日です。
明さんが移住を決意した際、いっしょに行くことを即決した和生さん。『自分にも小谷村のために出来ることがあるはず』そう考えたからです。そして1年前から「地域づくり応援団」としても活動しています。パートナーの諏訪さんと共に小谷村の良い所を再発見する日々。2人が今、最も注目しているのが小谷村のお茶の文化です。
小谷村では、道を歩けば「お茶、やってけ」と声が掛かるほど、お茶の時間が大切にされています。そのため、各家庭では数種類の漬物などお茶請けが常に用意されています。和生さんは『小谷村漬物ガイドマップ』を作り、村起こしをしたいと考えています。
仕事を続けている妻の優子さんが小谷村を訪れるのは、春夏秋冬、3カ月に1度のペース。優子さんが梢乃雪にやって来たこの日、和生さんの山村留学時代、担任だった上遠野先生がやって来ました。思い出話に花が咲く中、優子さんが取り出したのは、既に廃校となってしまった母校・中土小学校の校歌を奏でるオルゴール。小谷村と出会うきっかけとなった山村留学。大切な思い出です。
明さんには、優子さんに見せたい場所がありました。それは移住から3年かけてコツコツとリフォームをした優子さんのための部屋。久しぶりの夫婦の時間、小谷村への感謝の思いを語り合います。「山村留学に子どもを預けていた親が、ここに暮らしているということが、まずは恩返しの第一歩では…」と話す明さん。定年退職を迎え、優子さんがいずれ小谷村に移住してくる日を、明さんは、あせらずに待っています。