歴史情緒あふれる街並みが広がる奈良県五條市に鉄道ジオラマなどの展示販売を始めた野口定儀さん(60歳)と妻の千鶴子さん(61歳)が主人公です。子どもの頃から模型作りが大好きだった定儀さん。34歳で鉄道ジオラマの展示を見て感動。鉄道ジオラマ作りに取り組み始めました。54歳のとき、フリーマーケットなどで自分の作品を販売するようになりました。2012年定年退職後、五條新町にある町家を1カ月の期間限定で借りられると知り、鉄道ジオラマの展示販売を始めました。そして2012年11月、契約を更新。同じ場所で「ジオラマ工房Y.N」をオープンしました。鉄道ジオラマ作りをしながら、『町の模型屋さん』になる夢を追いかけ続けてきた定儀さんと、その夫を支える千鶴子さん。野口さんご夫婦の日常を紹介します。
店番をしながら模型作りをするのが定儀さんの日課。細部まで作り込みます。倉庫内壁の時計のシールは、プラスチックを丸く切ったものに貼り立体感を表現。外からは見えない内側までも塗装していきます。「リアルさを求める客の期待に応えたい」と言いつつ、一番リアルさを求めているのは定儀さん自身。模型の建物の中の人物や壁の汚れまで、定儀さんの情熱が注ぎ込まれています。
定儀さんは子どもたちに向けたジオラマ教室を開いています。子どもの頃、町の模型屋さんで体験したワクワクした気持ち―それを感じて欲しいと定儀さんは願っています。今回の参加者は2人。定儀さんはなるべく手を貸さず、子どもたちの感性に委ねます。昔、憧れていた模型屋のおじさんになることができた定儀さん。子どもたちだけでなく定儀さんも楽しい時間を過ごしました。
市立五條文化博物館にやって来た定儀さん。博物館の一室には市民がボランティアで作っている大きな五條市のジオラマが展示されています。定儀さんはジオラマ作りの腕を買われて手伝って欲しいと誘われました。ジオラマ作りでお世話になっている五條市に恩返しが出来ると、真剣に取り組んでいます。
この日、野口さんご夫婦は五條新町の皆さんの招待を受けました。空き家になっていた町家に、定儀さんの『町の模型屋さん』が出来たことを地元の皆さんは喜んでいます。皆さんの優しさに、心も体も温かくなった、定儀さんと千鶴子さんです。
町家を使える期間を延長した際、蔵も借りることができました。定儀さんはこの蔵を使って、お客さんが毎日来たくなるような楽しいスペースを作りたいと考え、自慢の戦艦大和や鉄道ジオラマを並べました。子どもたちが夢中になって遊び、大人も子どもの心を取り戻す。そんな光景が目に浮かびます。