熊本県美里町が舞台。2009年にパン工房「Little Farmer's Bakery GOTO」を開いた、光田ひとみさん(53歳)と清志さん(54歳)ご夫婦が主人公です。お二人はこだわりにこだわりを重ねてパン作りに励んでいます。名水として名高い地元の地下水をくみあげ、自分たちの手で育てた小麦や旬の野菜、果物を使い、天然酵母で丁寧に焼き上げられたパン。こうして作られたパンは、素材のうまみが生きていると大好評です。そんなお二人のパン作りを支えたのは、ひとみさんの父・正己さんでした。正己さんは病をおして、農業経験の無かった清志さんに農業を教え、ひとみさんのために小麦を作ってくれたのです。「手間ひまを惜しまない」という、亡き父の教えを守りながら、おいしいパン作りに励む光田さんご夫婦を紹介します。
畑から始まるパン作り。小麦や野菜を育てるうえで、お二人にとって頼もしい味方がいます。それが、ひとみさんの母・ウメノさんです。この日、清志さんはウメノさんと一緒に2種類の紫イモと里芋を収穫しました。清志さんにとってウメノさんは畑の師匠。覚えることはまだまだたくさんあります。ウメノさんの指導を仰ぎながら、清志さんは農業を学んでいます。
パン作りは深夜0時にスタート。まずは清志さんが粉ふるいで下準備。1時間後に、ひとみさんが起きてきます。こだわりが多く手間がかかるので、作業を分担して助け合います。清志さんたちが収穫した紫イモは、甘みが強い物と色が鮮やかな物の2種類。ベーグルに合う品種を探し、育てたものです。2種類の紫イモを使い、色鮮やかで自然な甘みをもったベーグルが焼きあがりました。お二人が焼くパンは、一つ一つにこだわりが詰まっています。
焼きあがったパンは、宇城市にある道の駅で販売しています。清志さんは、試食用のパンを手に、お客さんにおいしさをPRします。この試食販売を始めてから常連さんが増えました。今では、清志さんとの会話を楽しみに来る方もいるそうです。手間ひまかけたパンをお客さんに広めてくれた清志さんに、ひとみさんは感謝しています。
今年の小麦は豊作だったので、ささやかな収穫祭を開きました。集まったのは、お二人のパンをこよなく愛する常連さんたち。ほとんどが道の駅で知りあった方です。こうしてパン作りを習ったり、夕食に招かれることもあるそうです。「こだわりを捨てずに、お客さんを大事にしたい」という、お二人の“熱い思い”と“人柄”が伝わり、交流の輪が広がっているのでしょう。