山梨県北杜市明野町で手打ちそば屋『草至庵』を始めた金子至さん(68歳)と妻の惠子さん(64歳)が主人公です。食品メーカーの営業だった至さんは転勤が多く、単身赴任は20年に及びました。13回目の赴任先で胃にがんが見つかった至さん。闘病中に頭に浮かんだのは“残りの人生を田舎で暮らしたい”という思いでした。会社を退職後、ひまわり畑で有名な北杜市明野町で、築200年の古民家を見つけ移住したお2人。東京に住んでいた一人息子の徹也さんも同居を申し出てくれました。徹也さんは、家族一緒に出来る仕事としてそば屋の開業を考え、東京で1年半修業。2011年1月『草至庵』を開店しました。移り住んだひまわりの里で家族三人、同じ夢に向かって歩んでいます。
四方を美しい山々に囲まれた山梨県北杜市。北に八ヶ岳、西に南アルプス、南に富士山を望むことが出来ます。明野町では夏になると辺り一面に咲き誇るひまわりが有名で、観光地として人気です。四季によって表情を変える景色を楽しむことが出来ます。
築200年の『草至庵』の店内には至さんが趣味で集めた500点以上もの骨董品が並べられています。古いものは室町時代にまでさかのぼります。お店で実際に使われている『そばちょこ』もコレクションの1つです。
八ヶ岳のふもとに住む友人の山荘へと向かった金子さんご夫婦。惠子さんは山野草を見るのが大好きで、ここへ来ると時間を忘れてしまうそうです。同じ時期に田舎暮らしを始めたことがきっかけで、金子さんとの交流が生まれました。大自然の中でつもる話は尽きないようです。
一人息子の徹也さんは工芸の専門学校に通っていたこともあり、物作りが得意。『草至庵』の定休日を利用して、ろうを溶かした版画でお店までの道を案内する地図を作りました。手作り感を大切にしている徹也さん。出来上がった版画の地図は草至庵らしい温かみが出ています。