千葉県神崎町が舞台。主人公は2009年に豆腐店「月のとうふ」をオープンさせた周浦宏幸さん(43歳)と智美さん(38歳)です。陳列されるや次々と売れていく評判の豆腐。美味しさの秘密は、店に掘ったミネラル豊富な地下水と自慢の大豆です。大豆は神崎町産の日本古来からある在来種で、甘みと香りが強いのが特徴。宏幸さんはこの在来種大豆に惚れ込み、神崎町に移住し、「月のとうふ」を始めました。こだわりの豆腐作りと町を盛り上げる仲間との活動をお届けします。
在来種大豆に国産大豆を混ぜ合わせ地下水に浸す事13時間。それをすり潰し煮ていく宏幸さん、ここで味の良し悪しが決まると言います。煮過ぎて香りが飛ばないよう細心の注意を払います。やがて部屋中に在来種大豆の香りが立ち込め、甘みが凝縮した豆乳が出来ました。それに天然のにがりを絶妙のタイミングで加え、固めていきます。緊張感漂う中、まさに全身全霊をかけた豆腐作りです。
在来種大豆を生産しているのが農家の鈴木一司さんと正司さん兄弟。在来種大豆は育てるのも刈り取るのも手間がかかるそうです。それでも鈴木さんが在来種大豆にこだわるのは甘くて美味しいから。この日収穫した大豆は一週間ほど乾燥させて、宏幸さんの手で美味しい豆腐に生まれ変わります。
町おこしの輪が広がっている神崎町。宏幸さんもあるイベントを企画しました。それが月に一回「月のとうふ」の前で行われる『新月市』。特産品を売ったり、屋台を出したりして豆腐を買いに来たお客さんに喜ばれています。農家の鈴木さんは在来種大豆の味噌で味付けした焼きそばを作ります。町を賑やかにしようと老若男女が力を合わせて小さな町を盛り上げています。
朝4時から働いて帰宅するのは早くても夜の7時。一日があっという間に過ぎていくと智美さん。宏幸さんはよく眠れる事は幸せだと言います。夕食が家族団らんの貴重な時間ですが、宏幸さんは豆腐を少しだけ持ち帰り、味の確認をしています。30代で肝臓の病を経験した事がきっかけで歩み始めた豆腐職人の道。豆腐と、神崎町の人々に恩返しをする様に、一丁一丁に心を込めています。