伊豆半島の最南端、自然豊かな南伊豆町が舞台。「森の中で暮らしたい!」と早期退職後、移住し、2010年に自宅の庭で土曜日だけ営業のパン工房“森への入口”をオープンした島﨑行一さん(58歳)と洋子さん(57歳)が主人公です。森が豊かに成長し続けるには人間の手が不可欠。そこで2,000坪の自宅敷地の森林を整備する中で切り出した間伐材を有効利用しようと薪にし、パンを焼こうと考えた島﨑さんご夫婦。他にも森の恵みを上手に取り入れて暮らすお二人の生活は、まさに森と共に歩むエコライフです。
「パンは焼き上がって一晩置いたほうがおいしい」そんな思いから金曜日、ご夫婦は1日かけてパンを焼き上げます。材料は北海道産の小麦粉、伊豆大島産の塩、井戸水、そして、洋子さんが森の木々から集めた天然酵母。生地を焼くのは、行一さん手作りの石窯。もちろん燃料は薪。シンプルながら、こだわりの詰まったお二人のパン。焼き上がりまで20分。緊張と期待を胸に石窯を見守ります。
土曜日は週に一度のパン屋さんの営業日。全部で11種類のパンが並びます。素材にこだわるシンプルなパンが好評ですが、自家製のバジルやオレンジピールを加えたパンも人気です。開店早々、ご近所さんが集まってきました。手には畑で採れた野菜やハーブなどのお裾分けが・・・そして、パンを買った後は、お店の前で井戸端会議。清々しい森の空気の中、話に花が咲きます。
パンだけでなく様々な森の恵みを生活に取り入れて暮らすお二人。ボイラーを使い1日分のお湯を沸かすのも薪。そこから出た炭は、畑に撒き土壌改良に使っています。さらに森の中にある木々からお茶も手作り。ビワ・ドクダミ・スギナなど種類も豊富です。そんなお茶を頂くのは、お二人の特等席。森を見渡すテラス。野鳥の声や木の葉の揺れる音を聞きながら贅沢なティータイムです。
島﨑さんご夫婦が暮らす南伊豆町天神原地区は昭和20年代初期に開拓が進められた場所。並々ならぬ苦労の末に土地を切り開いた先人達に、ご夫婦は深く感謝しています。行一さんの夢は、この大好きな里山をより良い状態で次の世代に引き継ぐこと。自分の敷地の森だけではなく、近隣の荒れた山々も手入れしてまわりたいと考えています。森と共に歩む島﨑さんご夫婦の第二の人生は、美しい緑とあたたかい地域の人々に囲まれて輝いています。