宮崎県美郷町、小黒木(こくろぎ)集落に佇む農家レストラン「味さと」からはいつも明るく賑やかな声が聞こえてきます。伝統料理で集落を盛り上げようと立ち上がった阿部ひとみさん(58歳)、小田幸美さん(68歳)、早田安子さん(61歳)の3人。それぞれに集落で長年農家を営むお母さん達です。若者が居なくなり、年々人口が減り続ける集落を「どんげかせんといかん!」と2008年「小黒木集落活性化協議会」を結成。山の恵みをいかした料理で集落の魅力を伝えようと2011年2月、小黒木農家レストラン「味さと」をオープンしました。「こんな山奥に誰が来る?」と言う声をものともせずに、元気に邁進するお母さんパワーが、小黒木集落を明るく照らします!
山の恵みを詰め込んだ「味さと」のメニュー。朝、メンバーが自分の畑から収穫した新鮮な食材を、地域の伝統的な料理方法で調理していきます。煮しめに入れるこんにゃくひとつも、こんにゃく芋を掘るところから始まり、全て手作りです。旬の食材にこだわり、毎日変わるお料理は「季節を感じられる」とお客様からも大好評。「季節が変わるたびに来たい」とリピーターも増えています。
こちらはひとみさんの夫、春市さん(61歳)。「味さと」を陰で支える縁の下の力持ちです。退職を迎え、のんびり過ごそうと思っていたのですが・・・お店に出す為のカニを川へ取りに行ったり、裏山の竹で器を作ったり。気がつけば働いていた頃より忙しいかも・・・完全にお母さんのペースに巻き込まれてしまいました。首をかしげながらも、ひとみさん達のお願いに応える頼りになるお父さんです。
15時の閉店後は、まかないの時間。その日に来たお客さんの事を話しながら、一息つける楽しいひととき。そして、反省会の場でもあります。ずっと農家をしてきたお母さん達にとって、接客業は初めての経験。お客様の要望に、迷ってしまう時もありますが、そんな時は「郷土料理を通して小黒木集落の良さを伝える」という初心を思い出すようにしています。
小黒木集落を盛り上げたいと考えているのは「味さと」のメンバーだけではありません。心強い先輩方がこちら、小黒木農家バンド「てにゃわんず」です。農家のお母さん達が20年前に結成したバンドは、お祭りなどで引っ張りだこ。バンドメンバーには「味さと」に食材を提供している農家さんもいます。「味さと」での「てにゃわんず」LIVEが近く実現するかも?!お互いに刺激しあえる関係です。