三重県津市美杉町が舞台。かつて、お伊勢参りの旅人が通った伊勢本街道の宿場町だった上多気(かみたげ)地区。この地で農家民宿「なかや」を営む岩田二三男さん(55歳)と妻の裕恵さん(43歳)が主人公です。50歳を前に後の人生を考え直した二三男さん。田舎でのんびりと暮らしたい、そして誰もが田舎暮らしを体験できる拠点を作りたいと、早期退職し大阪府枚方市から家族3人で移住。2009年に「なかや」を開業しました。旧宿場町に新たに灯った農家民宿の灯。それは地域にとっても希望の灯りです。
宿は昔商家だったという築90年の古民家。今でも現役のかまどが自慢です。「なかや」では料理の提供をしていません。飲食店の許可を取るには、かまどを取り壊すなど大幅な改装が必要だったのです。そこで二三男さんが考えたのが体験自炊プラン。お客様はかまどでご飯を炊き、ホームステイ気分で田舎暮らしを楽しめます。
初めて挑戦するお客様にも二三男さんが丁寧に教えてくれます。
農家民宿を始める為、3年前に米作りを始めた二三男さん。民宿の仕事の合間を縫って田んぼに出ます。現在、耕作している水田は約2000坪。雑草が多い田んぼを見渡し「これでは落第点・・・」とつぶやく二三男さん。田んぼを貸してくれた農家さんは「二三男さんのお米、味はおいしいよ」と励まし、応援してくれています。がんばりましょう!
家計を支えるために平日は地元のJAで働く裕恵さん。お休みの日は地域のサークルに参加しています。今日は紅茶作りに挑戦。手作業で茶葉を揉み、発酵、乾燥させます。「会の皆さんと一緒にいると楽しくて癒されます」と笑顔で語る裕恵さん。紅茶の出来栄えにも満足そうです。移住には反対だった裕恵さん、慣れない生活での気疲れを和らげてくれたのは地元の方々でした。
上多気地区では新盆の家にご先祖様を迎える「ひだな」を飾る風習があります。今では作り方を覚えている人も少なくなりましたが、ご近所さんが集まって「ひだな」を手作りします。岩田さんご家族も見学にやって来ました。「子供達にも伝えていきたい」と裕恵さん。「もっと地域に溶け込むためにも、色々な風習も覚えたい」と、二三男さんも真剣に見つめていました。