北海道新得町が舞台。根室本線旧線、通称 旧狩勝線の鉄道遺産が多く残る町です。主人公はその廃線跡地でトロッコ鉄道の駅長をしている奥田善弘さん(62歳)。鉄道好きの善弘さんは仲間たちと2008年9月、「狩勝高原エコトロッコ鉄道」をオープンさせました。手作りで仕上げた走行距離800メートルのコースには、信号機や踏切、ポイント切替え装置が設置されています。また保存・展示されているSLや寝台列車は訪れる人々を魅了しています。もう一人の主人公は受付を手伝う妻の朱美さん(57歳)。実はご夫婦、去年8月までの3年あまり別居していました。奈良県で家業の表具屋を営んでいた善弘さんは、青春を謳歌した北海道で暮らしたいと思う様に。しかし朱美さんは猛反対。2007年4月、離婚覚悟で別居し、善弘さんは単身北海道へ移住しました。その後「NPO法人 旧狩勝線を楽しむ会」に入会し、トロッコ鉄道開業に参加した善弘さん。別居から3年あまり、朱美さんも移住し、善弘さんは北海道で夢のレールを伸ばし続けています。
自転車の様に足でこぐ人力トロッコに乗って線路を走ります。走行距離800メートルのコースには、善弘さん達が作った信号や踏切、ポイント切替え装置が設置されており、まるで運転士そのものになった気分を味わえます。
助産師の資格を持つ朱美さんは、ベビーマッサージの教室を開いています。ベビーマッサージとは赤ちゃんとの絆を深める心と身体のコミュニケーション。朱美さんのベビーマッサージは「わらべうた」を取り入れたオリジナル。北海道に移住してまだ一年未満ですが、新しい生活環境にも開拓精神で溶け込んでいます。
トロッコ鉄道の一大イベント、5年ぶりに機関車の塗装が始まりました。参加したのは「NPO法人・旧狩勝線を楽しむ会」のメンバー8人。大正11年に製造された9600形蒸気機関車。昭和50年にその役目を終えるまでに地球60周以上に匹敵する距離を走りぬきました。その活躍をたたえ、善弘さん達は保存活動を続けています。
3年余り別居を続けたご夫婦。残りの人生を後悔しない為にも2人で暮らしたいと、朱美さんは移住してきました。その思いを受け止めた善弘さん。夫婦の再出発は、北の大地で始まったばかりです。