今回の舞台は淡路島、南あわじ市。集落の高台に建つ築130年の古民家で、民宿“薫陶の郷”を営む池上邦彦さん(66歳)と妻のみさえさん(63歳)が主人公です。40代で民宿経営を夢見た邦彦さんには苦い経験があります。阪神・淡路大震災で持ち家が半壊、開業目前に夢を断念しました。14年を経て再び奮起した邦彦さんの背中を押したのは、みさえさんでした。2009年、兵庫県宝塚市から移住し、1日1組限定の古民家民宿を始めました。長年の夢を叶えたご夫婦の第二の人生を紹介します。
“薫陶の郷”は代々、庄屋さんが暮らしてきた築130年の古民家。民宿として使い続けるために、邦彦さんは自分の手で修復しています。客室に吊られた神棚は“金刀比羅宮”。幅160cmもの大変貴重な神棚です。赤い土壁は“べんがら壁”こちらも一般農家では見られない装飾的な内装です。拭き掃除が日課になったみさえさん。手間隙かけながら古民家の手入れを楽しんでいます。
民宿の自慢の一つが手打ちそば。淡路島産のそば粉を使って邦彦さんが打つそばは、豊かな風味と強いコシが特徴です。みさえさんの担当は地元の食材にこだわった彩り鮮やかな創作料理。囲炉裏で焼いて食べる串焼きも人気です。1日1組限定にしたのは夫婦二人で気配りの行き届いたサービスができるようにと考えたから。お客様には心行くまでのんびりして行って欲しいと願っています。
今日のお客様はかねてから知り合いのご夫婦二組。囲炉裏を囲めば会話が弾みます。「そば打ちの腕前がだんだん上がっている」との褒め言葉に照れくさそうな邦彦さん。おいしい料理と気の合う仲間たち、どこか懐かしい古民家の雰囲気に包まれ夜が更けていきます。空き家だった庄屋さんの古民家に灯りと賑わいが再び戻ったと、ご近所の方々もとても喜んでいます。
島の北部、淡路市生田地域は邦彦さんが使っているそば粉の産地。地域おこしのためにそば栽培を始めた生田地域の皆さんは共同運営の「そばカフェ」をオープンします。そば打ちを教えて欲しいとの依頼を受けた邦彦さん、「お手伝いできることはかけがえのない喜び」と言います。生徒さんの上達に頬を緩めるご夫婦。夢をもう一度!と挑戦した新生活はたくさんの笑顔が輝いています。