今回の舞台は、「みちのくの小京都」と呼ばれる秋田県仙北市角館町。武家屋敷を桜で知られるこの町に3年前に東京から移住した松尾学さん(67歳)と勝子さん(68歳)が主人公です。早期退職後、日本全国を旅し、楽しい時間を送っていた学さんでしたが、重度の糖尿病と診断され終の棲家を真剣に探すように。移住先は涼しい場所がいいと東北へと向かった学さん。その際、たまたま最初に訪れた角館の美しい町並みとそこに暮らす人々の温かさに触れ移住を決意。当初、移住に反対していた勝子さんでしたが、四季折々を過ごす中で「この素晴らしい角館の本当の魅力を伝えたい」と思うように。現在、それぞれに町おこしに奮闘する松尾さんご夫婦の雪国暮らしをご紹介します。
春夏秋冬を過ごす中でお2人がもっとも好きな季節が、冬。朝の日課は、ご夫婦そろっての散歩。「誰にも踏まれていない新雪を踏みしめるのが、何よりの贅沢」と話す勝子さん。桜の季節には観光客でごった返す武家屋敷通りをお2人でゆっくりと歩きます。一方の学さんは、朝の散歩の途中で立ち寄る温泉での時間が何よりの至福の時だそうで、ゆっくりと1時間、冷えきった体を温めます。
お2人のご自宅は、武家屋敷通りのちょうど真ん中にあるこちら。武家屋敷を模して作られた築10年の家を借りて暮らしています。この佇まいを見て観光客が訪ねてくることも。朝の散歩の後、勝子さんは雪かき、学さんは台所に立って朝食作り。「得意なことは得意な方がやるべき」これが松尾家の雪国暮らしの楽しみ方の極意なんだそうです。
勝子さんは、角館の魅力を訪れた人々に伝えたいと観光ガイドをしています。この日は、東京から来た4人組のお客さんと武家屋敷通りへ。途中、角館に現存する武家屋敷の中で最も古い石黒家に立ち寄りました。石黒家には、武士達の生活ぶりを忍ばせる欄間や内蔵など様々な暮らしの工夫が残されています。移住から3年、まだまだ知らないことが沢山あると勝子さん勉強の日々だそうです。
一方、学さんは、自分たちのような移住者を増やしたいと「角館町宿」と題しNPOを立ち上げ活動しています。現在、角館を訪れる観光客の滞在平均は90分。それでは本当の角館の良さを理解してもらえないと民家の空き部屋を利用し、素泊まり1万5千円で1週間滞在してもらおうと考えています。4月の本格始動に向けて毎日準備に大忙しです。
この日、「角館町宿」初のモニターツアーのお客様。
早速案内したのは地元で親しまれている荒物店。学さんは訪れたお客さんに武家屋敷通りだけでなく地元で愛される場所を見て、生活ぶりを感じて帰って欲しいと思っています。そして、冬に訪れたお客様には今度は春、夏、秋と四季折々の角館に訪れてもらうことで自分達のような移住者が少しでも増えればと考えているんです。