今回は兵庫県神戸市が舞台。2007年に早期退職し、イチゴ栽培を始めた坂口敏文さん(59歳)が主人公です。現在、農園の近くのアパートで単身生活中。妻のひとみさん(54歳)は小学校の先生、大阪府枚方市の自宅で暮らしています。家電メーカーのエンジニアだった敏文さんは、生涯現役で続けられる仕事を望み、イチゴ農家への転身を考えました。場所はサラリーマン時代に単身赴任していた神戸市。ひとみさんは「お互いが活き活きと暮らせるなら」と別々の生活を承諾しました。いずれは、ひとみさんも神戸で暮らす予定です。その日を夢見ながら頑張る敏文さんです。
午前5時半。敏文さんは毎朝、昼食の弁当を作ります。おかずは冷凍食品と卵焼き、そして千切りキャベツのサラダ。単身生活にもずいぶん慣れました。壁に貼った奥さんの写真は「引っ越したときに何もなく殺風景なので貼っただけ…」なんだそうです。照れくさそうに笑う横顔に男一人暮らしの哀愁がにじみます。
生涯現役で続けられる仕事としてイチゴの栽培を選んだ敏文さん。16アールのハウスで2種類のイチゴを作っています。腰を曲げず作業ができる高設(こうせつ)栽培は、水や養分が管を通って自動的に供給される仕組みです。現在の出荷量は1日60パック程。最盛期には400パック出荷すると言います。大変な作業です。
夕方、ご近所を巡る敏文さん。産直所で売れ残ったイチゴを半額で分けています。敏文さんのイチゴは大粒で甘いとご近所でも評判。「食べると笑顔になる、そんなイチゴを育てたい」と敏文さんは言います。ちなみに「イチゴは実が大きいほうが美味しい」と教えてくれました。
毎週日曜日の午後、敏文さんは大阪府枚方市の自宅へ帰ります。週に一度の家族で過ごす貴重な時間です。「好きなことをしている親父を見習いたい」と長男の岳史さん。「将来、いずれは神戸で一緒に暮らしたい」と、ひとみさんの嬉しい言葉。でも、それはまだ先の話。敏文さんの単身生活はもうしばらく続きそうです。