寄せては返す波をずっと眺めていたい。世界遺産・石見銀山を有する島根県大田市馬路地区に、そんな願いを叶えてくれる宿と食堂があります。山根俊隆さん(71歳)と山根直美さん(67歳)が開いた「鞆(とも)の銀蔵(かなぐら)」です。一度は故郷を離れた山根さんご夫婦。再び帰って来た時、海が美しく人々が暖かい馬路地区の良さを改めて実感しました。しかし故郷の過疎化は進む一方。2007年石見銀山が世界遺産に登録され、沢山の人々が故郷を訪れるようになった事をきっかけに、町おこしの仲間と共に「鞆(とも)の銀蔵(かなぐら)」を開きました。この食堂と宿を訪れる人たちに故郷の魅力を伝えたい。そして、住んでいる人たちにも元気を与えられる場にしたい。歴史ある海の里で始まった町おこしをお届けします。
食堂「鞆の銀蔵」の一押しは「ボベ飯」。目の前の岩場でとれる「ボベ貝」から出汁をとり、身と一緒に炊き込みご飯にします。子供の頃、海に遊びに行けばボベ貝を家に持って帰り、夕飯に作ってもらったという、この地域の人にとっては懐かしの味です。他にもお刺身からお味噌汁、小鉢まで海の幸がたっぷりのメニューには旅行者も地元の人も大満足です。
築100年の古民家を移築して作られた1日1組限定の宿「鞆の銀蔵」。波の音を聴きながらゆったりと過ごすのもよし、用意された様々な体験メニューを楽しむもよしです。この日宿泊したお客様は「干物作り体験」に挑戦。初めて作った干物の出来にとても満足した様子。こうした体験を通して、馬路地区の魅力を伝えたいと山根さんご夫婦は考えています。
地域活性化グループの仲間がサポートする「鞆の銀蔵」。印刷、建設など様々な職業をもったメンバーが、その技術をいかしながら「鞆の銀蔵」を盛りあげています。この日は、若い人を呼び込もうと俊隆さんが考えた新メニュー「カルパッチョ定食」の試食会。活性化グループのメンバーからも、様々な意見が飛び交います。仲間たちの郷土愛が「鞆の銀蔵」を支えています。
過疎化が進み、多くの高齢者が暮らす馬路地区。山根さんご夫婦はそんな方々に安心で安全な「鞆の銀蔵」のおいしいお料理を食べてもらいたいと、お弁当宅配サービスを始めました。観光で人を呼ぶだけでなく、この故郷を守ってきた人たちを大切にする。これもまた一つの町おこしの形だと、山根さんご夫婦は考えています。